熊谷市のファイナンシャルプランナー阿久津和宏です。
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相続対策の生命保険
vol.25、vo26で贈与のお話をしましたが、
相続対策には色んな場所で「生命保険」を活用すると効果が期待できることがあります。
さまざまなところで「生命保険」が出てきます。
おそらくあと2回位は出てきますが、混同しないように注意しましょう。
この対策は、下げる(移す)対策です。
どうするかというと、
贈与でもらった現金を生命保険料に使うという意味で、
「保険料の贈与プラン」と呼ばれています。
保険料の贈与プランとは?
「保険料の贈与プラン」とは、現金を子供に贈与し、その現金を使って子供が生命保険に加入する方法です。
具体的には次のようなステップとなります。
ステップ1:親が子供に現金を贈与。基礎控除を超えた分には贈与税がかかります。
ステップ2:子供は親からもらった現金を使い、生命保険に加入する
契約形態 :契約形態は次のようにします。
契約者 | 被保険者 | 受取人 |
子供 | 親 | 子供 |
保険の種類としては、将来相続税の納税気浸透を活用するために、必ず保険金がおりてくる終身保険が良いです。
ステップ3:相続発生時に保険金がおりてきます。
この場合、保険金はみなし相続財産ではなく、
子供の一時所得となり、所得税・住民税の課税対象となります。
※補足:生命保険の契約形態によって課税対象が変わります。Aさん、Bさん、Cさんで見ていこうと思います。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 税金の種類 |
A | A | B | 相続税 |
A | B | A | 一時所得 |
A | B | C | 贈与税 |
この贈与プランは、2番目のプランを活用するということです。
親から子供が贈与を受け、子供が契約者になって、親が被保険者、子供が受取人になります。
親が亡くなった時に、受け取るのは「子供」その際は、納税資金対策になったりしますね。
契約者が親なのか、子供なのか?
によって一時所得として課税されるわけですが、高額な財産を保有する人にとっては特に、
一時所得が有利になることが多いです。
一時所得の課税上のポイント
そもそも、一時所得のときの課税とはどういう課税方法かというと、
次のようになります。
{(保険金ー払込保険料)ー50万円}➗2
これが一時所得となり、
その年の所得に一時所得分を上乗せして課税することになります。
ポイントは以下のとおりです。
ポイント1:「保険金から払込保険料の合計額を引き」
ポイント2:「さらに50万円を引き」
ポイント3:その所得を2分の1にする
例)受取保険金1000万円、払込保険料900万円の場合で
年収が1000万円の場合でもコレにかかる所得税は、
{(1億円-9千万)-50万}=475万円(=一時所得の額)
年収1000万円の場合、ここに475万円をプラスして申告します。
年収1475万円の場合の税率は、33%(控除1,536,000円)
ですので、計算すると税金がわかります。
累進課税の相続税よりも有利になるのと同時に、
課税相続財産を減らすことができるという点で、
高額の相続税を払う可能性のある人には特に向いているといえます。
まさに、「安心・簡単・長続き」といえます。
保険料贈与プランの注意点があります。
昭和58年9月の国税庁の事務連絡
により、子供の一時所得としてみとめられていますが、
次の要件を満たすことを、守ることが必要とされています。
要件は念のため、こちらになります。
1.被相続人の死亡又は生命保険契約の満期により保険金等を取得した場合若しくは保険事故は発生していないが保険料の負担者が死亡した場合において、当該生命保険又は当該生命保険に関する権利の課税に当たっては、それぞれの保険料の負担者からそれらを相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなして、相続税又は贈与税を課税することとしている(相法3①一、三5)。
(注)生命保険金を受け取った者が保険料を負担している場合には、所得税(一時所得又は雑所得)が課税される。
2.生命保険契約の締結に当たっては、生計を維持している父親等が契約者となり被保険者は父親等、受取人は子供等として、その保険料の支払いは父親等が負担しているというのが通例である。
このような場合には、保険料の支払いについて、父親等と子供達との間に贈与関係は生じないとして、相続税法の規定に基づき、保険事故発生時を課税時期としてとらえ、保険金を受け取った子供等に対して相続税又は贈与税を課税することとしている。
3.ところが、最近、保険料支払い能力のない子供等を契約者及び受取人として生命保険契約を父親等が締結し、その支払保険料については、父親等が子供等に現金を贈与し、その現金を保険料の支払いに充てるという事例が見受けられるようになった。
4.この場合の支払保険料の負担者の判定については、過去の保険料の支払資金は父親等から贈与を受けた現金を充てていた旨、子供等(納税者)から主張があった場合は、事実関係を検討の上、例えば、①毎年の贈与契約書、②過去の贈与税の申告書、③所得税の確定申告等における生命保険料控除の状況、④その他贈与の事実が認定できるものなどから贈与事実の心証が得られたものは、これを認めることとする。
わかり易い言葉でご説明したいと思います。
①毎年の贈与契約書を作成すること
親から子に現金を贈与したという証拠が必要になります。
そのため、親子で毎年贈与契約書を作成する必要があります。
この場合の贈与はあくまでも現金の贈与なので、贈与契約書には「保険料」でなく、
「現金」と書きます。
この贈与契約書には2人共自署押印してください。その際の印鑑は、必ず自分のものを使いましょう。
そして、印鑑と通帳は必ず子ども自身が保管し、預金は子供は自由み使えるようにしておくことが大切です。
②過去の贈与税申告書の控えを保管しておくこと
年間110万円長の贈与は贈与税がかかるので、
毎年確定申告期に贈与税の申告が必要となります。
この贈与税申告書は贈与の証拠の一つになります。
贈与税のカカkる金額を贈与し、贈与税申告書と納付書を保管しておくのも一つの方法です。
③親の所得税の確定申告等において生命保険料の控除を受けていないこと
「保険料贈与プラン」は親が贈与した現金で子供が保険に加入するものなので、
親が自分の確定申告で生命保険料控除に使うことは出来ません。
保険料負担者はあくまで子供なので、親の確定申告には使えませんが、
もちろんのことですが、子ども自身の確定申告に使うことには問題ありません。
④その他贈与の事実が認定できるようにしておくこと
贈与で一番問題になるのは、「本当に贈与したのか」ということです。
例えば、こんなことがあったりします。
親の口座から直接保険料を引き落としていると、
現金を贈与したとは認められない場合があります。
したがって、必ず親が子供の口座に現金を振り込み、そこから保険料を引き落とすことが大切です。
また、贈与税がかかる場合は振り込んだ口座からおろして納税し、
子供名義の通帳や印鑑は子供が管理するようにしましょう。
④保険料贈与プランの上手な活用法
多くの人は、贈与というと贈与税を気にして基礎控除の110万円以下の贈与を考えがちですが、
しかし、このプランの場合は、あまり金額が少ないと生命保険を活用するメリットがあまりない場合が多いです。
贈与税は必要経費、手取り額を元に(保険料+納税額を試算して)生命保険に加入することで、
将来の納税資金対策にもなるのです。
先ほどお話した、
保険金は贈与プランで一時所得がいいか、相続税がいいかについては、
専門家に確認して決めていく必要はあります。
相続対策事前診断