- 2. 成果目標の設定と達成条件
- (1)全ての指定対象事業場において、令和6年度又は令和7年度内において有効な36協定について、労働基準法第36条第1項の規定によって労働時間を延長して労働させることができる時間及び休日において労働させることができる時間を短縮し、①又は②の範囲内で延長する労働時間数の上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届出を行うこと。
- (2)全ての指定対象事業場において、労働基準法第39条第6項で規定する年次有給休暇の計画的付与(以下「年休の計画的付与」)の規定を新たに導入すること。
- (3)全ての指定対象事業場において、労働基準法第39条第4項で規定する時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」という。)の規定を新たに導入し、かつ、「労働時間等設定改善指針(平成20年厚生労働省告示第108号)」(以下「ガイドライン」という。)に規定された、特に配慮を必要とする労働者について事業主が講ずべき措置として、別紙に定める特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、その他特に配慮を必要とする労働者のための休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること。
- 3. 助成額と補助率
- 4. 申請手続きと書類の準備
- 申請や受給に必要な書類
1. 働き方改革推進支援助成金の概要
1.1 助成金の目的と意義
働き方改革推進支援助成金は、主に中小企業向けに設計された制度で、企業が労働環境を改善し、従業員のワークライフバランスを促進することを目的としています。特に、労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進といった取り組みを支援するためのものです。日本における労働時間の長さや有給休暇の取得率が低いことが指摘されていますが、これらの問題を解消し、従業員の健康維持や生産性の向上を目指すため、企業が外部の専門家によるコンサルティングを受けたり、労務管理のための機器を導入したりする際に、その経費の一部が助成されます。
中小企業にとっては、これらの改善措置を導入するための初期コストが大きな課題となることが多いですが、助成金の活用により、このコストの負担を軽減することが可能になります。企業が労働環境の整備に取り組むことで、従業員のモチベーション向上や労働生産性の改善につながり、結果的には企業全体のパフォーマンス向上を目指すことができます。
1.2 支給対象となる取組
この助成金では、以下のような取り組みが支給対象となります:
- 労務管理担当者に対する研修:労働時間や休暇の適正管理に関する知識を強化し、従業員に適切な指導を行うことを目的とした研修です。特に、中小企業では労務管理の専門知識が不足している場合が多いため、外部専門家による研修が有益です。
- 労働者向けの研修や啓発活動:労働者が働き方改革の重要性を理解し、自ら積極的に休暇を取得したり、労働時間の短縮に協力したりするための意識啓発が行われます。これにより、企業と従業員が一体となって取り組む姿勢が醸成されます。
- 外部専門家によるコンサルティング:労務管理や就業規則の見直しに関するアドバイスを受けることで、企業が労働環境の改善に向けた適切な対応を取ることができます。特に、法令遵守の観点からも重要です。
- 就業規則や労使協定の作成・変更:労働基準法に基づいた適正な就業規則や労使協定を作成し、企業内でのルールを明確化します。これにより、従業員が安心して働ける環境を整備することができます。
- 人材確保のための取り組み:少子高齢化による人材不足が深刻化している中、労働環境を改善することで優秀な人材を確保するための取り組みが支援されます。例えば、柔軟な働き方を導入することで、幅広い層の人材を受け入れることが可能になります。
- 労務管理ソフトウェアや機器の導入:労務管理の効率化を図るためのシステムや機器の導入も助成対象となります。これにより、企業の事務作業の負担を軽減し、労働時間管理や休暇取得の促進が実現されます。
これらの取り組みを通じて、企業は労働時間の適正化や休暇取得促進のための環境整備を行うことが期待されます。
1.3 対象となる事業主
助成金を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。以下にその要件をまとめます:
- 労働者災害補償保険に加入していること:企業が従業員に対して適切な労働環境を提供し、万が一の事故に備えるために必要な保険に加入していることが前提となります。
- 業種ごとに定められた中小企業の基準を満たしていること:日本では、業種によって中小企業の定義が異なります。例えば、製造業や小売業では資本金や従業員数によって基準が設けられています。これに該当する企業であれば、助成金を申請することができます。
- 36協定を締結し、就業規則に年次有給休暇や特別休暇に関する規定があること:36協定とは、企業が労働時間の延長や休日労働に関して労働組合などと結ぶ協定のことです。この協定が適切に締結され、従業員が法的に保護されていることが条件となります。また、就業規則には、有給休暇や特別休暇(病気休暇や教育訓練休暇など)に関する規定が含まれている必要があります。
- 次のいずれかに該当すること。
2. 成果目標の設定と達成条件
成果目標は、以下の(1)から(3)の中から1つ以上選択します。
なお、選択した成果目標については、全ての指定対象事業場で成果目標の達成に向けて取組を行うこととし、指定対象事業場のうち1つでも成果目標が未達成の事業場がある場合は、当該成果目標に関する助成額は支給されないことに留意してください。
(1)全ての指定対象事業場において、令和6年度又は令和7年度内において有効な36協定について、労働基準法第36条第1項の規定によって労働時間を延長して労働させることができる時間及び休日において労働させることができる時間を短縮し、①又は②の範囲内で延長する労働時間数の上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届出を行うこと。
- 時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間以下に設定
- 時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間を超え月80時間以下に設定
(2)全ての指定対象事業場において、労働基準法第39条第6項で規定する年次有給休暇の計画的付与(以下「年休の計画的付与」)の規定を新たに導入すること。
【留意事項】
以下の場合は、成果目標の評価は未達成となりますのでご留意ください。
- 交付申請後から、事業実施予定期間の終了日までに、変更後の36協定の届出をしなかった場合
- 改善事業実施後に36協定で設定する時間数について、上記4(1)①または②を満たしていない場合
(3)全ての指定対象事業場において、労働基準法第39条第4項で規定する時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」という。)の規定を新たに導入し、かつ、「労働時間等設定改善指針(平成20年厚生労働省告示第108号)」(以下「ガイドライン」という。)に規定された、特に配慮を必要とする労働者について事業主が講ずべき措置として、別紙に定める特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、その他特に配慮を必要とする労働者のための休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること。
【留意事項】
(1)時間単位年休を導入する場合の留意事項
- 交付申請後から、事業実施予定期間の終了日までに、就業規則及び労使協定の作成・変更を行い、必要な手続きを経て施行されていることが必要です。 なお、労働者10人未満の事業場は、就業規則について、所轄労働基準監督署長への届出の代わりに、労働組合等の労働者代表者の申立書でも可能です。
- 時間単位年休の規定を行う場合は、少なくとも対象となる労働者の範囲、時間単位年休の日数、時間単位年休を取得した日の1日の所定労働時間数、1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数、時間単位年休1時間当たりの賃金額について、就業規則に明文化してください。
- 以下の場合は、成果目標の評価は未達成となりますのでご留意ください。
- 交付申請時点で、時間単位年休が規定されている場合
- 交付申請時点で、就業規則等に時間単位年休が規定されている場合で、当該制度を変更する場合
- 支給申請時点で上記の項目を就業規則及び労使協定に規定していない場合
3. 助成額と補助率
助成額
成果目標の達成状況に応じて、支給対象となる取組の実施に要した経費の一部を支給します。
(1)補助率
- 補助率は 3/4 です。
- 事業規模が30名以下かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費(「2 支給対象となる取組」の6〜9の経費)の合計が30万円(税込)を超える場合、当該経費の補助率は 4/5 となります。
(2)助成上限額
助成上限額は、①と②の合計額となります。
- 成果目標4(1)について
指定対象事業場の申請時点の時間外・休日労働時間数及び改善事業実施後に設定する時間外・休日労働時間数に応じて、以下の表1のとおりです。
事業実施後に設定する時間外労働と休日労働の合計時間数 | 現に有効な36協定において、時間外労働と休日労働の合計時間数を月80時間を超えて設定している事業場 | 現に有効な36協定において、時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間を超えて設定している事業場 |
---|---|---|
時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間以下に設定 | 200万円 | 150万円 |
時間外労働と休日労働時間数を月60時間を超え月80時間以下に設定 | 100万円 | – |
- 成果目標4(2)および(3)について
それぞれ上限額は 25万円 となります。
(3)助成上限額の加算
上記4の成果目標に加えて、対象事業場で指定する労働者(雇い入れ後3月を経過しない労働者を除く)の時間当たりの賃金額の引上げを 3%以上 または 5%以上 行うことを成果目標にすることができます。賃金引上げは 3%以上 または 5%以上 のいずれかを選択するものとなります。加算額は、指定した労働者の賃金の引上げ数の合計に応じて、表2のとおりです。
- 表2:常時使用する労働者数が30人を超える中小企業事業主の場合
引上げ人数 | 3%以上引上げ | 5%以上引上げ |
---|---|---|
1~3人 | 15万円 | 24万円 |
4~6人 | 30万円 | 48万円 |
7~10人 | 50万円 | 80万円 |
11人~30人 | 1人当たり5万円(上限150万円) | 1人当たり8万円(上限240万円) |
- 表2:常時使用する労働者数が30人以下の中小企業事業主の場合
引上げ人数 | 3%以上引上げ | 5%以上引上げ |
---|---|---|
1~3人 | 30万円 | 48万円 |
4~6人 | 60万円 | 96万円 |
7~10人 | 100万円 | 160万円 |
11人~30人 | 1人当たり10万円(上限300万円) | 1人当たり16万円(上限480万円) |
【留意事項】
- 交付申請後から、事業実施予定期間の終了日までに、就業規則の作成・変更を行い、必要な手続きを経て施行されていることが必要です。労働者10人未満の事業場は、労働組合等の労働者代表者の申立書でも可能です。
- 支給申請時に賃金引上げ率が成果目標に設定した賃金引上げ率に満たない場合は、当該労働者は引上げ人数の対象としません。
4. 申請手続きと書類の準備
4.1 申請フローチャート
申請手続きは以下のような流れで進められます:
- 交付申請書の提出:まずは、交付申請書を事業開始前に提出します。この際、事業実施計画書や見積書などを添付し、詳細な事業内容を説明します。
- 助成金交付決定通知の受領:申請が承認されると、労働局から交付決定通知が届きます。
- 事業実施とその報告:事業実施計画に基づき、改善事業を進めます。実施後には、経費や実績を報告するための書類を作成し、提出する必要があります。
- 支給申請書の提出:事業完了後、30日以内に支給申請書を提出します。
4.2 交付申請の手順
交付申請書は、事業開始前に労働局に提出する必要があります。この申請手続きでは、企業が実施予定の取り組みの内容や、それにかかる経費の見積もりなど、詳細な情報を提出することが求められます。企業がしっかりとした事業計画を立て、適切な申請書類を整えることが、助成金をスムーズに受け取るための鍵となります。
4.3 事業内容変更時の対応
もし、交付決定後に事業内容を変更する必要が生じた場合は、事前に「事業実施計画変更申請書」を提出し、労働局の承認を受ける必要があります。この申請手続きにより、変更内容が適切であるかどうかが確認され、助成金の支給に影響を及ぼす可能性があるため、慎重に進めることが重要です。