デジタルツール導入促進緊急支援事業はどんな補助金?

この補助金は、「デジタルツール導入促進緊急支援事業」に関するものです。東京都内の中小企業(特に建設業と運輸業)を対象に、デジタルツールの新たな導入を支援するための経費の一部を助成するものです。この補助金の目的は、時間外労働の上限規制(2024年問題)に対応し、企業のデジタル化を促進することで、継続的な成長や発展を支援することです。

主な内容としては、デジタルツール(ソフトウェアやクラウドサービス)の購入費用や、その初期設定、カスタマイズ、保守運用に関わる費用が助成対象となります。助成率は対象経費の4分の3以内で、最大100万円が助成されます。

それぞれ詳しく説明しますね。

デジタルツール導入促進緊急支援事業の助成対象事業とは?

この補助金の助成対象事業は、企業のデジタル化を進めるための新たなデジタルツールの導入およびその運用を開始することを目的としています。詳細は以下の通りです。

1. 助成対象事業の要件

助成対象事業として認められるには、次の2つの要件を満たす必要があります。

ア. 自社の事業活動のデジタル化のために、デジタルツールを新たに導入し、運用を開始すること

企業が事業活動の効率化や改善のために、パッケージ製品のソフトウェアやクラウドサービスなどのデジタルツールを新たに導入することが対象です。既存のソフトウェアやツールの追加や更新ではなく、完全に新しいツールの導入が要件となります。

イ. 将来にわたり継続的にデジタルツールを活用し、自社業務の成長・発展を図る取り組みであること

導入したツールを一時的に使用するのではなく、企業の業務改善や成長を支える持続的な取り組みであることが条件です。例えば、財務会計や給与計算の自動化、マーケティングオートメーションツールの導入による営業・マーケティング活動の効率化が例として挙げられます。

2. 助成対象事業の具体例

助成対象事業の例として、以下のような取り組みが挙げられています:

  • バックオフィス業務の効率化: 複数の業務改善ソフトウェアやクラウドサービス(例:財務会計、人事労務、給与計算、税務管理など)を組み合わせて導入し、事務作業を削減する取り組み。
  • 工事現場での作業効率化: クラウド上で設計図面を管理し、工事現場で情報を共有して作業を効率化すること。
  • 配車業務の自動化: タクシーなどの配車の実績を位置情報で把握し、報告書の作成を自動化する取り組み。
  • マーケティング活動の自動化: マーケティングオートメーションツールの導入による営業・マーケティングの効率化。

3. 助成対象外となる事業の例

以下のような事業は助成対象外となります:

  • 既存のソフトウェアのライセンス追加: 既に導入済みのソフトウェアのライセンス追加やアップグレードは対象外です。
  • 一般的なソフトウェア: OSやセキュリティソフト、表計算や文書作成ソフトのような汎用性の高いソフトウェアは対象外です。
  • ハードウェア機器: PCやタブレット、読み取り機器などのハードウェア機器は助成対象外です。

これらの条件を満たす新規デジタルツールの導入に対して、助成金が支給される仕組みとなっています。

デジタルツール導入促進緊急支援事業の申請要件

申請要件について詳しく説明します。申請者がこの補助金を受けるためには、以下の要件を全て満たしている必要があります。

1. 中小企業であること

申請者は、中小企業基本法第2条第1項に規定される中小企業である必要があります。以下の基準に従って判定されます。

  • 製造業、建設業、運輸業、その他の業種(ソフトウェア業、情報処理サービス業などを含む): 資本金3億円以下または従業員300人以下
  • ゴム製品製造業の一部: 資本金3億円以下または従業員900人以下
  • 卸売業: 資本金1億円以下または従業員100人以下
  • サービス業・旅館業: 資本金5000万円以下または従業員100人以下
  • 小売業: 資本金5000万円以下または従業員50人以下

大企業や一般財団法人、NPO法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人などは対象外です。また、申請者が中小企業であっても、大企業が実質的に経営に参画している場合は対象外となります。

2. 建設業または運輸業に該当する東京都内の中小企業であること

申請者は、日本標準産業分類表において建設業または運輸業に該当する、東京都内に本店や支店を持つ中小企業である必要があります。

  • 他の業種の場合は、申請書類(履歴事項全部証明書など)で、建設業や運輸業に関連する事業を営んでいることを証明する必要があります。

3. 東京都内で事業を実施していること

申請時点で、申請者は東京都内に本店または支店を持ち、東京都内で実質的に事業を行っていることが要件となります。

  • 個人事業主の場合: 税務署に提出した「個人事業の開業・廃業等届出書」により、東京都内に所在することを確認できる必要があります。

4. 従業員を雇用していること

申請時点で従業員を雇用していることが必要です。この要件は、事業の継続性や成長性を保証するためのものです。

5. 取組の実施場所が東京都内であること

助成対象となる事業は、東京都内にある申請者の本社、支店、工場などで実施される必要があります。また、完了検査時に新たに導入したデジタルツールが実際に運用されていることも条件です。

6. 助成金の重複受給や他の助成金との併願がないこと

申請者は、同じ事業や経費について他の助成金を受けていないことが要件です。また、他の国や自治体、東京都中小企業振興公社などが提供する助成金と併願して申請することはできません。

  • 例外として、中小企業デジタルツール導入促進支援事業との併願は認められています。

7. 過去に不正受給がないこと

過去5年間に、公社や国、都道府県、市町村などが提供する助成事業に関して、不正行為や重大な事故を起こしていないことが必要です。また、過去に助成金を受けた場合は、必要な報告書類を期日通りに提出していることが求められます。

8. その他の要件

  • 東京都および公社に対する賃料や使用料の支払いに滞納がないこと。
  • 助成事業終了後も、事業の継続的な成長を計画していること。
  • 民事再生法や会社更生法による申し立てなど、事業の継続が不確実な状況がないこと。
  • 暴力団や風俗営業など、社会通念上不適切とみなされる業種を営んでいないこと。

これらの要件をすべて満たすことが、助成金申請の前提条件となります。

デジタルツール導入促進緊急支援事業の助成対象経費

助成対象経費一覧について説明します。この補助金では、助成対象となる経費は自社の事業活動のデジタル化を進めるために必要な経費に限られています。以下はその詳細です。

【助成対象経費一覧】

  1. ソフトウェア導入費・クラウド利用費
    • 内容: 新たに導入して運用を開始する市販のパッケージソフトウェアおよびクラウドサービスの購入費用(ツール本体)と、導入に伴う初期設定、カスタマイズ、運用・保守サポートに要する費用(関連経費)です。
    • 助成上限額: 関連経費については、50万円が上限です。
  2. 関連経費
    • 初期設定費用: デジタルツール導入に伴う初期設定のための費用が助成対象です。
    • カスタマイズ費用: ソフトウェアやクラウドサービスの業務に合わせたカスタマイズのための費用が含まれます。
    • 運用・保守サポート費用: デジタルツールの保守や運用サポートにかかる費用も助成対象です。
  3. 注意事項
    • ソフトウェアまたはクラウドサービス本体の価格が税抜き100万円を超える場合は、2社以上の見積書を提出する必要があります。
    • 初期設定、カスタマイズ、運用・保守サポートにかかる費用が税抜き100万円を超える場合も、2社以上の見積書が必要です。
    • サブスクリプション契約の場合は、助成対象期間内に契約し、使用・支払いが完了した分に限って助成対象となります。クレジットカード支払いの場合、銀行口座からの引き落としが完了している必要があります。
  4. 前払いに関するルール
    • 利用費等を前払いする場合も、助成金の請求や実績報告書の提出は事業実施後に行う必要があります。

【助成対象外経費】

  • 消費税、収入印紙代、振込手数料、旅費交通費などの間接経費
  • 広告宣伝費や類する費用(ショッピングモールサイトへの掲載費用など)
  • 通信費(携帯電話やインターネット回線の月額料金など)
  • 中古品の購入にかかる経費
  • リース・レンタル契約に関する経費
  • 自社製品の購入や内製の場合の経費
  • 他の取引と相殺して支払いが行われた経費

これらの経費は、助成の対象外ですので、申請時には注意が必要です。

デジタルツール導入促進緊急支援事業の申請手続きの流れ

申請手続きの流れについて詳しく説明します。この補助金の申請手続きは、事前準備から助成金の支払いまで複数のステップを経て進行します。

申請手続きの流れ

  1. 申請書の作成
    • 申請者は、申請書類を作成します。必要な書類は後述の「申請に必要な書類一覧」を参照します。
    • 作成した申請書は、電子申請システム「jGrants」および専用フォームを通じて提出します。
  2. 申請の提出
    • 申請期間は、**令和6年10月1日(火)から10月22日(火)**までです。必要書類がすべて揃っていない場合は受け付けられないため、余裕を持って申請を行う必要があります。
  3. 書類審査
    • 申請書類がすべて揃った順に書類審査が開始されます。
    • 書類審査は令和6年10月下旬から令和7年1月中旬まで行われ、審査の過程で追加書類の提出が求められる場合があります。
  4. 交付決定
    • 審査が完了した順に交付決定が行われ、申請者に「交付決定通知書」が送付されます。
    • 交付決定の予定時期は以下の通りです。
      • 第1回交付決定:令和6年12月下旬
      • 第2回交付決定:令和7年1月下旬
  5. 事業の実施
    • 助成対象期間内に、デジタルツールの発注、契約、納品、支払い、運用を開始します。助成対象期間は以下の通りです。
      • 第1回助成対象期間:令和7年1月1日~令和7年12月31日
      • 第2回助成対象期間:令和7年2月1日~令和8年1月31日
  6. 実績報告書の提出
    • 事業が完了したら、助成対象経費の報告として実績報告書を提出します。この報告書には支払いに関する経理書類(領収書、振込控えなど)や導入したデジタルツールの写真や運用開始を確認できる資料が必要です。
  7. 完了検査
    • 公社は提出された実績報告書をもとに完了検査を行い、事業が適切に完了したかを確認します。
  8. 助成金額の確定
    • 完了検査から約2か月後に、助成金額が確定します。申請内容や経費に不備がある場合、助成金額が減額される可能性があります。
  9. 助成金の請求と支払い
    • 助成金額が確定した後、申請者は助成金の請求を行います。請求書が到着してから1か月程度で助成金が支払われます。

重要なポイント

  • gBizIDプライムの取得: 申請には、デジタル庁が運営する補助金の電子申請システム「jGrants」を使用します。このため、事前に「gBizIDプライム」を取得する必要があります。取得には約2週間かかるので、早めに準備することが推奨されます。
  • 追加書類の提出: 審査の過程で、申請者に追加書類や説明が求められる場合があります。期限内に対応しないと不受理となるため、迅速に対応する必要があります。

申請手続きの全体フロー

  1. 申請書作成
  2. 申請の提出(令和6年10月1日~10月22日)
  3. 書類審査(10月下旬~翌年1月中旬)
  4. 交付決定(12月下旬~翌年1月下旬)
  5. 事業実施(翌年1月1日~12月31日または2月1日~翌々年1月31日)
  6. 実績報告書の提出
  7. 完了検査
  8. 助成金額の確定
  9. 助成金の請求と支払い

このフローに従って手続きが進められます。

デジタルツール導入促進緊急支援事業の必要書類は?

デジタルツール導入促進緊急支援事業の必要書類

審査のポイント

審査のポイント

  1. 申請者が申請要件を満たしているか
    • 申請者が補助金の対象となる中小企業かどうか、申請要件(業種、所在地、雇用状況など)を満たしているかを確認します。
  2. 申請者の取組が本事業の目的に合致しているか
    • 提案されたデジタルツールの導入・運用が、企業のデジタル化および成長に寄与するか、事業の持続的な発展を目的としているかを審査します。
  3. 申請された経費や期間が助成対象に適合しているか
    • 申請された経費が助成対象経費に該当するか、助成対象期間内に実施される事業かどうかを確認します。
  4. 追加書類や説明の提出が求められる場合がある
    • 審査中に、申請内容の詳細確認や補足資料の提出が求められることがあります。提出や対応の遅れは審査の遅延につながります。
  5. 書類の不備や不足に対する対応が重要
    • 申請書類に不備や不足がある場合は、期限内に追加・修正書類を提出する必要があります。期限を過ぎた場合や対応が不十分な場合、申請は不受理となります。
  6. 申請者が実際に申請手続きを行っているか
    • 申請者本人や関係者が実際に申請手続きを行っていない(第三者によるなりすましなど)場合は、不受理となります。
  7. 申請内容と異なる事実が判明した場合
    • 申請書に記載された内容と異なる事実が判明した場合、審査は中止されることがあります。
  8. 審査に関する個別の問い合わせには応じない
    • 審査の進捗や結果について、個別のお問い合わせには対応しないため、審査の過程については問い合わせができません。
  9. デジタルツールの提供元への確認
    • 必要に応じて、事務局からデジタルツールの提供元に対して、ツールの機能や価格に関する説明を求める場合があります。

これらのポイントを基に、申請書類が適切であるかどうかが評価されます。