補助金を使った人材採用・人件費カバーの考え方
「人を雇いたいけれど、採用コストも人件費も重い」と感じている中小企業・個人事業主の方は多いです。補助金や助成金を正しく使うと、採用にかかるコストや人件費の一部を公的資金でカバーできることがあります。制度の組み合わせ方と注意点を整理します。
中小企業の人手不足は深刻な状況が続いています。求人広告費・採用エージェント費用・入社後の研修費用・試用期間中の人件費など、採用にかかる総コストは1人あたり数十万〜数百万円に上ることがあります。このコストを補助金・助成金で部分的にカバーする考え方を整理します。
なお、人件費・採用費への補助は制度によって対象範囲が大きく異なります。以下の内容は2026年5月時点の情報をもとにしていますが、各制度の公募要領・最新の厚生労働省発表(出典:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html)を必ずご確認ください。
補助金と助成金で「採用コスト」をカバーできる仕組みとは
採用に関わるコストを補助金・助成金でカバーする方法は大きく2つに分かれます。一つは「採用活動そのものの費用(求人広告・採用サイト)を補助金で賄う方法」、もう一つは「採用後の人件費・育成費を助成金でカバーする方法」です。
この2つは性格が異なります。補助金(主に経産省系)は事業投資への補助のため、採用活動費が「販路拡大・事業強化」の文脈で説明できる場合に対象になることがあります。助成金(主に厚生労働省系)は雇用の維持・拡大・質向上を支援する目的のため、採用後の人件費・研修費が対象になることが多いです。
採用活動費に使える補助金の例
- 小規模事業者持続化補助金(販路開拓・集客目的) 採用サイト・求人ページの制作費が「販路拡大のためのウェブサイト整備」として対象になることがあります。ただし、主目的が「採用」であると見なされると対象外になることがあるため、事業計画書での記述方法に注意が必要です。商工会議所・商工会が窓口になります。補助上限・補助率は公募時期によって異なることがあります(出典:中小企業庁 小規模事業者持続化補助金 https://r3.jizokukahojokin.info/)。
- IT導入補助金(採用管理ツール・労務管理システム) 採用管理システム・タレントマネジメントツール・勤怠管理システムなどのITツール導入費が対象になることがあります。ツールを使うことで採用業務の効率化・定着率向上につながると説明できる場合に活用できます。登録されたITツールから選ぶ仕組みのため、使いたいツールが対象かどうかを事前確認が必要です。
採用後の人件費・育成費に使える助成金
採用後の人件費・研修費に対して支援が受けられる助成金は、主に厚生労働省が管轄する雇用関係助成金です。以下に代表的な制度を整理します。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
パート・アルバイト・契約社員などの非正規労働者を正社員に転換した場合に、1人あたり一定額が事業主に支給される制度です。「非正規社員をまず試用期間として雇い、その後正社員化する」という流れで活用する事業者が多く見られます。就業規則への「正社員転換規定」の明記が要件になることがあります。支給額・要件は年度によって変わることがあるため、最新の厚生労働省の案内をご確認ください。
人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)
離職率を低下させるための雇用管理制度(評価・処遇制度・研修制度・健康づくり制度等)を導入した場合に支給される助成金です。採用だけでなく「定着」のコストを下げる効果があります。制度を書面(就業規則等)で整備し、実際に運用した後に申請する流れになります(出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/jinzai_kakuho.html)。
トライアル雇用助成金
ハローワーク経由で求職者を短期間(原則3か月)試行雇用した場合に、雇用期間中の人件費の一部が事業主に支給される制度です。「採用してみたが、すぐに離職してしまうリスク」を減らしながら人件費の一部をカバーできます。対象となる求職者(就職困難者・就職氷河期世代等)のカテゴリによって支給額が異なることがあります。ハローワークを通じた求人・採用が要件です。
特定求職者雇用開発助成金
高年齢者(65歳以上)・障がい者・母子家庭の母など、就職が特に困難な人をハローワーク経由で雇い入れた場合に支給される助成金です。支給期間・金額は対象者の区分によって異なることがあります。人件費コストの実質的な軽減として機能することがあります。
補助金と助成金を組み合わせる場合の考え方
採用に関連する補助金と助成金は、同一の費用に対して重複受給はできませんが、「採用活動費は補助金」「採用後の人件費は助成金」のように費用の種類を分けて組み合わせることは可能なことがあります。
- 採用サイト制作費 → 持続化補助金(販路開拓の一環として申請)
- 採用管理システム → IT導入補助金(業務効率化として申請)
- 採用後の正社員化 → キャリアアップ助成金(非正規→正社員転換で申請)
- 定着支援の制度整備 → 人材確保等支援助成金(雇用管理制度導入で申請)
ただし、各制度の申請タイミング・要件・書類が異なるため、複数制度を並行して進める場合は申請スケジュールの管理が必要です。申請時期を誤ると要件を満たせなくなることがあるため、社会保険労務士・行政書士・商工会への相談を早めに行うことが重要です。
人件費を補助金の「対象経費」にできる制度
一部の補助金では、事業に直接従事する社員の人件費(専従者給与)が補助対象経費として認められることがあります。
ものづくり補助金の「専従者給与」
ものづくり補助金では、補助事業に専従して従事する社員の給与が「人件費(労務費)」として対象経費に含まれることがあります。ただし、専従の要件(他の業務との兼務割合・タイムシート等の管理書類の整備)が厳しく、事業終了後の実績報告でしっかりした証拠書類が必要になります。申請前に認定支援機関に相談して要件を確認することをおすすめします。
省力化投資補助金(中小企業省力化投資補助事業)
人手不足の解消を目的とした省力化製品(IoT・ロボット・自動化設備等)の導入費用を補助する制度です。採用コストを直接カバーするものではありませんが、「人を増やす代わりに設備で補う」という考え方で、実質的な人件費増加を抑える効果が期待できることがあります(出典:中小企業庁「中小企業省力化投資補助事業」https://shoryokuka.smrj.go.jp/)。
採用コストを補助金・助成金でカバーする際の注意点
- 助成金は「先に雇用・整備してから申請」が基本 雇用関係の助成金は、採用・制度整備を先に実施してから申請するものが多いです。「助成金をもらってから採用しよう」という順序では受給できないことがあります。採用を決める前に申請要件を確認しておくことが重要です。
- 雇用保険・社会保険への加入が前提になることが多い 多くの雇用関係助成金では、対象労働者が雇用保険に加入していること・事業主が適切に社会保険料を納付していることが要件になります。未加入・滞納がある場合は申請ができないことがあります。
- 就業規則の整備が必要なことがある キャリアアップ助成金・人材確保等支援助成金では、就業規則への特定規定の記載が必要になることがあります。就業規則のない会社(常時10人未満で届出義務がない会社)でも、助成金のために規則を整備・届出するケースがあります。
- 申請から入金までの期間が長いことがある 助成金は申請後、支給決定まで数か月かかることがあります。入金を前提にした資金計画を立てることには注意が必要です。
よくある質問
補助金の種類によって異なります。ものづくり補助金では専従者給与(補助事業に従事する社内人件費)が対象になることがあります。一方、一般的な採用費・給与は補助対象外になることが多いため、各制度の公募要領で確認が必要です。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、非正規社員を正社員に転換した後に申請します。転換日から6か月の雇用継続後、申請期限内に申請します。詳細は最新の厚生労働省の公募要領で確認してください。
採用活動費(求人広告費・採用サイト制作費等)は、小規模事業者持続化補助金の対象になることがあります。また、雇用関係の助成金(キャリアアップ助成金・人材確保等支援助成金等)は採用後の定着・育成コストのカバーに使える場合があります。
雇用関連の助成金はハローワーク(公共職業安定所)または社会保険労務士への相談が一般的です。設備投資・IT導入等の補助金は認定支援機関(行政書士・商工会等)への相談が有効です。両方の組み合わせを検討する場合は、補助金全般を見られるコンサルタントへの相談が効率的です。
Well Consultant合同会社の補助金支援チーム。補助金採択件数157件・採択総額26億円超の実績をもとに、中小企業の補助金活用を幅広くサポートしています。雇用関連助成金から設備投資補助金まで、複数制度の組み合わせ支援を得意としています。
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