補助金を使った採用・人材確保の方法と助成金活用
「人を採用したいが採用コストが高い」「パートを正社員にしたいが何か支援はあるか」「従業員のスキルアップ研修に使える補助金はないか」――人手不足と採用コスト増に悩む中小企業にとって、助成金・補助金は採用負担を軽減する有効な手段です。採用・人材確保に使える支援制度は複数あり、補助金(採択審査あり)と助成金(要件充足で受給)の2種類に大きく分かれます。この記事では、採用・人材確保に活用できる主要な助成金の種類・受給要件・申請手順と、補助金との組み合わせ方を実務目線で解説します。
採用・人材確保の分野では、補助金よりも助成金のほうが直接的に活用できるケースが多いです。助成金は要件を満たせば採択審査なしで受給できる点が補助金と大きく異なります。ただし「要件を満たしているか」の確認と「事前の届出」が必須で、順序を間違えると支給対象外になります。まず主要な助成金の種類と要件を把握してから、自社に合う制度を選ぶことが重要です。
一方、採用環境の整備(採用サイト・雇用条件の見直し・研修制度の構築)には補助金を活用できる場合があります。採用そのものではなく「採用につながる環境整備」として補助金を位置づけると、活用範囲が広がります。助成金と補助金を組み合わせて使うことで、採用コストを抑えながら人材確保の取り組みを強化できます。
採用・人材確保に使える主要助成金の種類
キャリアアップ助成金|有期雇用から正社員化・処遇改善
キャリアアップ助成金は、パートタイム・有期雇用労働者のキャリアアップ(正社員転換・処遇改善)を行う事業主を支援する厚生労働省の助成金です。代表的なコースは「正社員化コース」で、有期雇用労働者・無期雇用労働者を正社員に転換した場合に助成が受けられます。1人あたりの助成額(中小企業)は転換区分・加算要件によって異なりますが、正社員化コースは最大80万円が目安とされています(最新金額は厚労省公式で確認)。
キャリアアップ助成金を受給するためには、キャリアアップ計画書の事前提出・正社員転換規定が就業規則に明記されていること・転換後の賃金が転換前より一定割合以上増加していることなどの要件があります。「正社員にしようと決めてから助成金を知った」では間に合わない場合があるため、転換前に必ず計画届を提出してください。
人材開発支援助成金|従業員のスキルアップ研修費用
人材開発支援助成金は、従業員の職業訓練(OFF-JT)に要する経費・賃金の一部を助成する制度です。コースによって助成率・上限額が異なりますが、研修費用の45〜75%程度が助成される場合があります。飲食・小売・IT・製造など業種を問わず活用でき、外部研修への参加費・eラーニング受講費・資格取得費用等が対象になる場合があります。
人材開発支援助成金で最も重要なのは「訓練開始前に計画届を提出すること」です。訓練が始まってから届出しても対象外になります。訓練計画の策定→管轄の都道府県労働局への計画届提出→訓練実施→支給申請という順序を守ることが受給の条件です。
特定求職者雇用開発助成金|就職困難者・高齢者・障害者の雇用
特定求職者雇用開発助成金は、高齢者(60歳以上)・障害者・母子家庭の母・長期失業者など、就職が特に難しいとされる方をハローワーク等の紹介で雇用した場合に助成される制度です。助成額は対象者の属性・雇用形態・事業主規模によって異なります。「人手が足りないが、一般の求人では集まらない」という状況の事業者にとって、幅広い採用候補者を確保しながら助成を受けられる仕組みです。
トライアル雇用助成金|試行的な雇用から本採用へ
トライアル雇用助成金は、就職困難者等を短期間(原則3か月)試行的に雇用し、その後の常用雇用につなげることを目的とした助成金です。トライアル期間中、事業主には対象者1人あたり月4万円(障害者の場合は月8万円)が支給されます。ハローワークが求職者と事業主の間に入ってマッチングするため、採用時のリスクを抑えながら人材を確保できます。
助成金受給の前提条件|申請前に確認すべき4点
雇用関係助成金を受給するためには、共通して満たすべき前提条件があります。これらを満たしていないと、要件を充足しても支給されない場合があります。申請前に必ず確認してください。
- 1. 雇用保険の適用事業所であること 雇用関係助成金の多くは、雇用保険に加入している事業所が対象です。パート・アルバイトを雇用している事業所でも、一定の労働時間(週20時間以上)の従業員は雇用保険の加入が必要です。加入状況を確認してください。
- 2. 助成金の不正受給・返還歴がないこと 過去に助成金の不正受給・返還歴がある事業主は、一定期間の申請ができない場合があります。
- 3. 労働関係法令を遵守していること 最低賃金法・労働基準法・労働保険料の納付状況が適正であることが前提です。賃金不払い・労基法違反が発覚している事業所は申請できない場合があります。
- 4. 就業規則の整備(必要な場合) キャリアアップ助成金など一部の助成金では、就業規則に正社員転換規定・処遇改善規定が明記されていることが要件です。就業規則が古い・ない場合は整備から始めてください。
| 助成金名 | 主な対象 | 助成の目安 | 事前届出 |
|---|---|---|---|
| キャリアアップ助成金(正社員化) | 有期→正社員転換 | 最大80万円/人(中小) | キャリアアップ計画届(転換前) |
| 人材開発支援助成金 | 従業員の訓練・研修 | 経費の45〜75%程度 | 訓練計画届(訓練開始前) |
| 特定求職者雇用開発助成金 | 高齢者・障害者・就職困難者 | 対象者区分による | ハローワーク紹介が必要 |
| トライアル雇用助成金 | 就職困難者の試行雇用 | 月4万円(最長3か月) | ハローワーク経由の申込 |
補助金を採用環境整備に活用する方法
持続化補助金で採用ページ付きホームページを作成する
小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費を活用して、採用情報を掲載したホームページを作成する事業者がいます。ただし、持続化補助金の目的は「販路開拓・業務効率化」であり、「採用のためだけのサイト」では採択が難しいです。「新規顧客獲得と採用情報の発信を兼ねたホームページ」として事業計画書を構成し、販路開拓の効果を主軸に書くことが重要です。
IT導入補助金で採用管理・労務管理システムを導入する
IT導入補助金の登録ツールの中には、採用管理システム・勤怠管理システム・給与計算ソフト・労務管理ツールなども含まれます。採用後の人材管理・労務業務のデジタル化を補助金で進めることで、少ない事務工数で採用・雇用管理ができる体制を整えられます。特に給与計算・勤怠管理のクラウド化はインボイス対応類型の会計ソフトと組み合わせて活用できる場合があります。
ものづくり補助金・省力化投資補助金で人手不足を機械化で補う
採用難・人手不足に対するアプローチとして、補助金を使って省力化・自動化設備を導入する方法があります。省力化投資補助金ではロボット・IoT・AI機器の導入が対象で、製造業・飲食業・サービス業での労働力不足を設備で補う取り組みに使えます。「採用を増やす」だけでなく「今いる人員で生産性を上げる」視点で補助金を活用することも有効な選択です。
助成金申請の手順と注意点
雇用関係助成金の申請は、多くの場合、管轄のハローワーク(公共職業安定所)または都道府県労働局を窓口とします。申請書類は厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできますが、助成金の種類によって様式・添付書類が異なるため、まず窓口に相談することをおすすめします。
- ステップ1|活用する助成金を絞り込む 自社の状況(雇用形態・従業員数・課題)と照らし合わせ、受給要件を満たせる助成金を選びます。複数の助成金を同時に活用できる場合もあります。
- ステップ2|ハローワーク・都道府県労働局に相談 申請前に窓口に相談し、要件・必要書類・提出期限を確認します。「事前届出」が必要な助成金は、行動を起こす前に届出を完了させる順序が必須です。
- ステップ3|計画届・申請書の提出 必要な計画届を提出し、取り組みを実施します。キャリアアップ助成金なら転換前にキャリアアップ計画届・人材開発支援助成金なら訓練前に計画届を提出します。
- ステップ4|取り組み実施・証拠書類の保管 取り組みを実施しながら、賃金台帳・雇用契約書・出勤簿・研修修了証明書などの証拠書類を整備・保管します。後の支給申請で必要になります。
- ステップ5|支給申請・審査・入金 取り組み完了後に支給申請書を提出します。審査を経て支給決定・入金となります。申請から入金まで数か月かかる場合があります。
- 「事前届出」が必要な助成金は、行動前に届出を完了させること
- 雇用保険の加入・最低賃金の遵守・賃金不払いがないことを事前確認
- 就業規則に必要な規定が明記されているか確認・整備
- 証拠書類(賃金台帳・雇用契約書・出勤簿等)を整備・保管
- 申請書類は最新様式を使用(旧様式は受理されない場合がある)
- 申請から入金まで数か月かかる資金計画で動く
社会保険労務士との連携を検討する
雇用関係助成金は書類の種類が多く、要件の確認・書類準備・届出の順序管理が複雑です。特にキャリアアップ助成金・人材開発支援助成金は書類量が多く、手続きミスで受給できなくなるリスクがあります。助成金申請の実務支援は社会保険労務士(社労士)が対応します。助成金の申請代行・就業規則整備・労務相談を社労士に依頼することで、申請ミスを防ぎながら確実に受給できる体制が整います。補助金コンサルと社労士を組み合わせて活用することで、補助金・助成金の両面から経営支援を受けられます。
- 厚生労働省「キャリアアップ助成金」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
- 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html
- 経済産業省 ミラサポplus:https://mirasapo-plus.go.jp/
よくある質問
代表的なものとして、キャリアアップ助成金(有期雇用者の正社員化・処遇改善)、特定求職者雇用開発助成金(高齢者・障害者・就職困難者の雇用)、人材開発支援助成金(従業員の訓練・教育研修費用)、トライアル雇用助成金(試験的な雇用)などがあります。いずれも厚生労働省管轄の助成金で、要件を満たせば採択審査なしで支給されます。
有期雇用労働者等を正社員に転換した場合、1人あたり最大80万円(中小企業)が支給されます(金額は要件・転換後の処遇状況等により変わります)。支給額・要件は改定されることがあるため、最新の厚生労働省公式サイトまたはハローワークで確認してください。
多くの雇用関係助成金では、就業規則の整備が要件になっています。常時10人以上の従業員を雇用する事業所は就業規則の作成・届出が労働基準法で義務付けられており、10人未満でも助成金申請のために規定の整備が求められる場合があります。申請前に就業規則の内容が最新の法令に対応しているかを確認してください。
採用活動そのもの(求人広告費・採用サイト作成費など)に直接使える補助金は限られますが、小規模事業者持続化補助金の「広報費」や「ウェブサイト関連費」を活用して採用ページを含むホームページを作成する形で間接的に活用する事業者もいます。ただし、持続化補助金の目的は「販路開拓・業務効率化」であるため、採用目的だけの申請では採択が難しいです。
OFF-JT(職場外訓練)の研修費用・受講料・訓練中の賃金等が対象です。コースによって対象訓練が異なり、一般訓練コース(業務上必要な訓練)・特別訓練コース(デジタル・グリーン関連等)などがあります。事前に計画届を管轄の都道府県労働局に提出することが要件で、訓練開始前の届出が必須です。
Well Consultant合同会社代表。行政書士として補助金申請支援に特化した実務を展開。中小企業庁認定の経営革新等支援機関として、ものづくり補助金・持続化補助金・IT導入補助金など主要補助金の申請書作成から採択後フォローまでを一貫してサポート。補助金採択件数157件・採択総額26億円超の実績をもとに、補助金コンサルとして独立・継続するためのノウハウを発信しています。
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