「建設業でも補助金は使えるの?」という声をよくいただきます。結論から言うと、建設業は複数の補助金制度の対象になることがあります。ただし、業種特有の申請ポイントと注意点があるため、この記事で整理しておきます。

建設業は日本の産業の中でも特に人手不足・高齢化・資材価格の高騰という三重の課題を抱えている業種です。国土交通省や中小企業庁は、建設業の生産性向上・DX化・人材育成を後押しするための支援策を複数設けており、補助金もそのひとつです。

この記事では、建設業が申請できる主な補助金制度の特徴、申請時に押さえておきたいポイント、そして建設業特有の注意点を実務の視点から解説します。設備投資・IT導入・人材育成のいずれを検討している方も参考にしてください。

建設業が利用できる主な補助金の全体像

建設業が活用できる補助金は、大きく次の4カテゴリに分類できます。制度ごとに対象経費・補助率・審査の難易度が異なるため、自社の投資計画に合ったものを選ぶことが重要です。

建設業が対象になる主な補助金(2024〜2026年度)
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
  • IT導入補助金(施工管理・原価管理・図面管理ツール等)
  • 小規模事業者持続化補助金(工務店・リフォーム業者等)
  • 省エネルギー投資促進支援事業費補助金(エネルギーコスト削減設備)
  • 雇用関連の助成金(人材確保・育成・処遇改善)

参考:中小企業庁「ミラサポplus 補助金・助成金情報」(https://mirasapo-plus.go.jp/)では、業種・目的別に補助金を検索できます。建設業の方は「建設業」で絞り込んで確認することをおすすめします。

ものづくり補助金――建設業での活用例と申請の流れ

建設業でのものづくり補助金活用
ものづくり補助金は設備投資・DX化を後押しする代表的な制度です

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者が革新的な製品・サービスの開発や生産性向上に向けた設備投資を行う際に費用の一部を補助する制度です。建設業では以下のような投資が対象になることがあります。

建設業でものづくり補助金の対象になることがある経費の例

  • 建設機械・特殊車両の導入 測量・掘削・クレーン作業など施工に使う機械で、生産性向上が見込めるものが対象になることがあります。ただし、単純な補充・更新ではなく「革新的な取り組み」として位置づけられるかどうかが審査のポイントになります。
  • 3D測量・BIM/CIM関連ソフト・機材 建設DXの一環として国土交通省が推進しているBIM(建築情報モデリング)やCIM(建設情報モデリング)に対応したソフトウェアや関連機材が対象になることがあります。
  • 施工品質管理システムの開発・導入 独自の施工品質管理システムや検査・記録システムの開発費用が対象になることがあります。ソフトウェア費用も補助対象になる場合があります。
  • 工場・作業所の生産設備 プレカット工場・鉄筋加工場等を持つ建設業者が、加工精度向上・自動化のために設備を導入する場合に対象になることがあります。

ものづくり補助金の補助率は原則として1/2(小規模事業者は2/3)で、補助上限額は申請する枠によって異なります。電子申請システム(jGrants)から申請し、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)と連携することが要件です。

参考:中小企業庁「ものづくり補助金総合サイト」(https://portal.monodukuri-hojo.jp/)で最新の公募要領を確認してください。

IT導入補助金――建設業のDX推進に活用できる制度

IT導入補助金は、業務効率化・売上向上のためにITツールを導入する費用の一部を補助する制度です。建設業は「現場での紙管理」「属人的な見積り・原価管理」「勤怠記録の手作業」など、デジタル化の余地が大きい業種であるため、IT導入補助金を活用しやすい条件が揃っていることがあります。

建設業でIT導入補助金の対象になることがあるツールの例

  • 施工管理アプリ・クラウド型工程管理ソフト 現場の進捗・安全・品質・原価を一元管理できるクラウド型のツールが対象になることがあります。写真管理・日報作成・帳票出力機能を含むものが多く、現場の紙作業を大幅に削減できるツールが登録されています。
  • 原価管理・見積りソフト 工事ごとの原価をリアルタイムで把握できるシステムや、過去実績から見積りを自動生成するソフトが対象になることがあります。
  • 勤怠管理・就業管理システム 建設現場での入退場管理・残業時間の自動集計・有給管理などの機能をもつクラウド型勤怠システムが対象になることがあります。
  • 電子契約・書類管理ツール 下請け業者との契約書・注文書の電子化、図面・仕様書のクラウド管理ツールが対象になることがあります。

IT導入補助金の申請では、まず「IT導入支援事業者」に登録された事業者から対象ツールを選ぶ必要があります。建設業向けに特化したITツールを扱う支援事業者も増えていますので、補助金事務局の公式サイトで確認することをおすすめします。

参考:IT導入補助金公式サイト(https://it-shien.smrj.go.jp/

小規模事業者持続化補助金――工務店・リフォーム業者に向いている制度

工務店・リフォーム業者の販路開拓
持続化補助金はホームページ制作や展示会出展費用に活用できます

従業員数が少ない建設業者、特に地域密着型の工務店・リフォーム会社・内装業者などは、小規模事業者持続化補助金が使いやすい場合があります。

この補助金は、商工会・商工会議所のサポートを受けながら販路開拓・集客強化に取り組む費用を補助する制度です。建設業での活用例としては次のようなものがあります。

工務店・リフォーム業者が活用できる持続化補助金の使い方(例)
  • 自社ホームページのリニューアル・SEO対策
  • 施工実績・お客様の声をまとめた会社案内・チラシの制作
  • 地域の住宅展示イベントへの出展費用
  • OB顧客向けDMの送付・ニュースレター制作
  • SNS広告・Webマーケティング費用(上限あり)

持続化補助金の補助率は2/3で、通常枠は補助上限額が設けられています。申請の前に、地元の商工会または商工会議所に相談し、経営計画書・補助事業計画書の作成支援を受けることが申請の要件になっています。

建設業が補助金を申請する際の注意点

建設業が補助金を申請する際には、製造業やサービス業と異なる独自の注意点があります。以下の点を申請前に必ず確認してください。

注意点1:「革新性」の説明が鍵になる

ものづくり補助金など競争型の補助金では、「自社にとって革新的な取り組みである」という説明が審査の大きなポイントです。建設業の場合、単に「老朽化した機械を入れ替えたい」という理由では採択されにくいことがあります。「新工法への対応」「工期の何%短縮が見込まれるか」「生産性がどう変わるか」を数字で説明できるかどうかが重要です。

注意点2:補助金は後払いのため資金繰りに注意

補助金は原則として「先に自社で費用を支払い、後から補助金が振り込まれる」後払い制です。建設業は元請け・下請けの構造上、資金回収が遅れることがある業種のため、補助金の入金タイミングと自社の資金繰りを事前に照合しておくことが重要です。必要に応じて金融機関への橋渡し融資の相談も検討してください。

注意点3:許可・認可の状況を確認する

補助金の申請要件として、税金の未納がないこと・社会保険への加入が求められることがあります。建設業の場合、建設業許可の有効期限・労働保険・社会保険の加入状況を申請前に整理しておくことをおすすめします。

注意点4:外注費・下請け費用は補助対象外になることが多い

補助金の対象経費は原則として「自社が直接支出する費用」です。建設業では下請け業者への発注費用が大きな割合を占めることがありますが、これらは補助対象外になることがほとんどです。補助対象になるのは自社購入の設備費・ソフトウェア費・委託費(一定要件あり)等に限られることがあります。

補助金申請前に確認しておくべき事項(建設業向け)
  • 税金・社会保険料の未納がないか
  • 建設業許可の有効期限が切れていないか
  • 申請する経費が「自社直接支出」に当たるか
  • 認定支援機関と連携できているか(ものづくり補助金等)
  • 補助金採択後から入金までの資金繰り計画ができているか

建設業で補助金活用を成功させるためのポイント

補助金申請の採択率を高めるために、建設業者が実務で意識しておきたいポイントをまとめます。

事業計画書に「数字」を入れる

審査員が最も重視するのは「この投資によって何がどう変わるか」という点です。「施工管理ソフトを入れると、現場の写真整理・報告書作成の時間が月○時間削減できる」「BIM導入で設計変更の手戻りを○%削減できる」など、定量的な効果を具体的に書くことが重要です。

施工実績・受注先の多様性を示す

建設業の事業計画書では、過去の施工実績・受注金額の推移・主要取引先の業種などを整理して記載することで、事業の持続性・信頼性を審査員に伝えやすくなることがあります。

認定支援機関と早めに連携する

ものづくり補助金の申請では認定支援機関との連携が必要です。認定支援機関には行政書士・税理士・中小企業診断士・金融機関などがあります。公募開始後に動き始めると締め切りに間に合わないことがあるため、次回の公募に備えて早めに相談しておくことをおすすめします。

参考:中小企業庁「認定経営革新等支援機関検索」(https://ninteishien.force.com/NSK_CertificationArea)から、地域・業種別に認定支援機関を検索できます。

建設業向け補助金の比較表

補助金名 主な対象経費 補助率 向いている建設業者
ものづくり補助金 設備費・システム費・外注費(一部) 1/2〜2/3 設備投資・生産性向上を検討中の中小建設業
IT導入補助金 ソフトウェア費・クラウド利用料 1/2〜3/4 施工管理・原価管理のDXを進めたい業者
持続化補助金 広告費・ホームページ制作・展示会費 2/3 地域密着型の工務店・リフォーム業者
省エネ補助金 省エネ設備・断熱改修・再エネ設備 1/3〜1/2程度(制度による) 作業所・工場のエネルギーコスト削減を検討中の業者

よくある質問

Q建設業でものづくり補助金は使えますか?
A

建設業も対象になることがあります。施工品質の向上・工期短縮・原価低減につながる設備投資や、建設DXにかかわるシステム導入が対象になるケースがあります。ただし、公募要領で対象業種の確認が必要です。

Q建設業が補助金申請する際に特有の注意点はありますか?
A

建設業は工事の受注生産が基本のため、設備投資の目的・効果を定量的に説明することが重要です。また、許可番号・経審点数・施工実績などの情報を事業計画書に盛り込むと審査員に伝わりやすくなることがあります。

Q建設業向けの補助金はIT系でも使えますか?
A

IT導入補助金は建設業でも活用できることがあります。施工管理ソフト・原価管理システム・勤怠管理ツールなどが対象になるケースがあります。ITツールは事前にIT導入支援事業者から選ぶ仕組みです。

Q建設業は補助金と融資を組み合わせて使えますか?
A

補助金は原則として後払いのため、先に自己資金や融資で支払いを行い、後から補助金を受け取る流れになります。日本政策金融公庫や信用保証協会の融資と組み合わせるケースがあります。事前に金融機関に相談することをおすすめします。