設備投資をするなら、補助金だけでなく税制優遇も同時に活用することで、実質的な投資コストを大きく下げられることがあります。補助金(ものづくり補助金等)と特別償却・税額控除(中小企業経営強化税制等)の組み合わせ方と、注意すべき税務処理について解説します。

設備投資の「節税設計」は、補助金単体で考えると一面しか見えません。設備投資に関連する税制優遇(特別償却・税額控除)と組み合わせることで、補助金だけでは得られない税負担の軽減効果が生まれることがあります。

ただし、補助金と税制優遇を組み合わせる際には「圧縮記帳」の扱いが重要です。圧縮記帳の有無によって特別償却・税額控除の計算基礎が変わるため、税理士への確認なしに判断するのは注意が必要です。この記事では仕組みの概要を整理し、専門家への相談が必要なポイントを明示します。

設備投資で使える主な税制優遇制度

中小企業向け設備投資税制
中小企業向け設備投資税制は補助金と組み合わせて活用できることがあります

中小企業が設備投資をする際に使える主な税制優遇制度は以下のとおりです。制度の適用要件・適用期限は変更されることがあるため、国税庁・中小企業庁の最新情報を確認することをおすすめします。

中小企業経営強化税制

中小企業者等が「経営力向上計画」の認定を受けた上で、一定の設備(生産性向上設備・収益力強化設備・デジタル化設備・経営資源集約化設備等)を取得・事業供用した場合に適用できる制度です。

中小企業経営強化税制の主な内容
  • 即時償却(取得価額の100%を取得年度に一括償却)または税額控除(取得価額の10%、資本金3,000万円超1億円以下は7%)を選択できることがある
  • 対象設備:機械装置・工具・器具備品・建物附属設備・ソフトウェア等(種類によって最低取得価額が異なることがある)
  • 適用には経営力向上計画の認定が必要。事前に主務大臣(業種所管官庁)への申請が必要なことがある
  • 出典:中小企業庁「中小企業経営強化税制」https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/index.html

中小企業投資促進税制

中小企業者等が一定の機械・装置等を取得した場合に、特別償却(取得価額の30%)または税額控除(取得価額の7%)が適用できることがある制度です。経営力向上計画の認定は不要なため、手続き負担が比較的少ない制度として知られています。対象設備の種類・金額要件は年度によって変わることがあります(出典:国税庁「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5433.htm)。

少額減価償却資産の特例(30万円未満)

青色申告の中小企業者等は、取得価額が30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、取得した事業年度の費用として全額損金算入できることがあります(年間合計300万円まで)。補助金でソフトウェア・周辺機器等を購入する際に活用できることがあります。

補助金と特別償却を組み合わせる際の「圧縮記帳」の考え方

補助金の圧縮記帳と特別償却の関係
圧縮記帳の有無によって特別償却の効果が変わります

補助金を受けた場合、その受給額は原則として「益金(収益)」に算入されます。設備を購入した年度に補助金が入金されると、その年の課税所得が増えて税負担が重くなることがあります。これを緩和する税務処理が「圧縮記帳」です。

圧縮記帳とは何か

圧縮記帳とは、補助金を受けた年度に発生する課税を翌年度以降に繰り延べる処理です。補助金相当額だけ設備の帳簿価額(取得価額)を減額することで、その年の課税所得を圧縮します。ただし将来の減価償却費がその分減るため、税負担が消えるわけではなく「先送り」になる点に注意が必要です。

圧縮記帳を行った場合の特別償却への影響

圧縮記帳を選択すると、設備の取得価額が補助金相当分だけ減額されます。特別償却・税額控除の計算基礎はこの「減額後の取得価額」になるため、特別償却・税額控除の効果が小さくなることがあります。

圧縮記帳あり・なしの比較(概念的な整理)
  • 圧縮記帳あり:設備取得年の税負担を抑えられる。特別償却の計算基礎は圧縮後の金額になる
  • 圧縮記帳なし:設備取得年の補助金受給分が益金算入されるため税負担が増える可能性がある。一方、特別償却の計算基礎は圧縮前(本来の)取得価額のまま
  • どちらが有利かは、その年の利益額・税率・繰越欠損金の有無によって異なることがある

圧縮記帳と特別償却の組み合わせは、企業の税務状況によって有利不利が変わります。必ず税理士に確認した上で判断することをおすすめします。

補助金と税制優遇の組み合わせパターン

設備投資に補助金と税制優遇を組み合わせるパターンを整理します。

パターン 使う制度 主なポイント
A:補助金のみ ものづくり補助金等 設備購入費の1/2〜2/3をカバー。税制優遇なし
B:補助金+圧縮記帳+通常償却 補助金+圧縮記帳 設備取得年の税負担を抑え、残額を通常の耐用年数で償却
C:補助金+圧縮記帳+中小企業経営強化税制(即時償却) 補助金+圧縮記帳+即時償却 圧縮後の取得価額を即時償却。設備取得年に減価償却費を集中させられる
D:補助金+圧縮記帳なし+税額控除 補助金+税額控除 圧縮記帳を使わず元の取得価額で税額控除を計算。取得年の税負担増と引き換えに控除額が大きくなる可能性がある

パターンの選択は、企業の利益水準・現金残高・翌期以降の収益見通しによって最適解が変わります。「補助金があるから即時償却を選ぶ」と機械的に判断せず、税理士との検討が重要です。

申請・手続きのスケジュール管理が重要な理由

  • 経営力向上計画の認定は補助金採択と別々に動く 中小企業経営強化税制の適用には、経営力向上計画の認定(主務大臣への申請)が必要なことがあります。認定には一定の審査期間がかかるため、補助金の採択通知を待ってから動き始めると間に合わないことがあります。補助金申請と並行して認定手続きを進めることが重要です。
  • 設備の事業供用タイミングが税制適用に影響することがある 特別償却・税額控除は、設備を「取得し、事業の用に供した日」を基準に適用されます。補助金の事業実施期間の終了日と税制の適用事業年度が一致しているかどうかの確認が必要です。
  • 補助金の確定検査後に圧縮記帳の処理が確定する 圧縮記帳の処理は、補助金の確定額(実績報告・確定検査後)が確定してから行います。申請額と確定額が異なることがあるため、税務処理は補助金の確定後に行うことが原則です。

よくある質問

Q補助金で購入した設備に特別償却は使えますか?
A

補助金で購入した設備に特別償却を適用すること自体は原則として可能です。ただし「圧縮記帳」を使った場合は、取得価額が圧縮された後の金額が減価償却の基礎になるため、特別償却の効果が変わることがあります。圧縮記帳と特別償却の有利不利は利益状況・税率によって異なるため、税理士への確認が重要です。

Q圧縮記帳とは何ですか?
A

圧縮記帳とは、補助金を受けた年度に発生する課税を翌年度以降に繰り延べる税務処理です。補助金は益金に算入されますが、圧縮記帳を使うと設備の取得価額を補助金相当分だけ減額し、その年の課税所得を抑えることができます。将来の減価償却費が減る点には注意が必要です。

Q中小企業経営強化税制とはどのような制度ですか?
A

中小企業経営強化税制は、中小企業が一定の設備(生産性向上設備・収益力強化設備等)を取得した場合に、取得価額の100%即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除が選択できる制度です。適用には経営力向上計画の認定が必要なことがあります。

Q補助金と税額控除を同時に使えますか?
A

補助金と税額控除(中小企業経営強化税制等)を同一設備に対して両方適用すること自体は禁止されていませんが、圧縮記帳を行った場合は税額控除の計算基礎となる取得価額が変わることがあります。有利不利の判断は企業の税務状況によって異なるため、税理士への相談が必要です。

Well Consultant 補助金支援チーム
著者
Well Consultant 補助金支援チーム
行政書士・経営革新等支援機関(認定支援機関)|Well Consultant合同会社

Well Consultant合同会社の補助金支援チーム。補助金採択件数157件・採択総額26億円超の実績をもとに、設備投資に関する補助金申請・税制優遇・融資の組み合わせ支援を行っています。税務処理については担当税理士との連携を推奨しています。