「厨房設備を新しくしたい」「テイクアウト・デリバリーを始めたい」「ホームページを作って集客を増やしたい」「人手不足をどうにかしたい」――飲食店の経営課題は多岐にわたりますが、実はこうした取り組みの多くに国や自治体の補助金が活用できます。持続化補助金・IT導入補助金・省力化投資補助金・ものづくり補助金など、飲食店が申請できる補助金は複数あります。この記事では、飲食店が活用できる補助金の種類・使い分け・申請のポイントを実務目線で解説します。

飲食店は補助金の申請において、業種横断で使える補助金と飲食業に特有の使い方がある補助金の両方を活用できる立場にあります。補助金を使ったことがない飲食店経営者の方でも、「どの取り組みに・どの補助金が・どれくらい使えるか」を把握することが出発点です。補助金の仕組みを一度理解してしまえば、設備投資・集客・デジタル化・人手不足対策と、経営の複数の課題に継続的に活用できるようになります。

飲食業はサービス業に分類されるため、小規模事業者持続化補助金では常時使用する従業員数5人以下が「小規模事業者」の対象です(宿泊業・娯楽業を除く)。個人経営・夫婦経営・数名のスタッフがいる飲食店の多くがこの基準を満たします。まず自社の規模と業種を確認してから、申請できる補助金を絞り込んでいきましょう。

飲食店が活用できる主要補助金の種類と用途の全体像図解
図1:飲食店が活用できる主要補助金の種類と用途の全体像

飲食店が使える主要補助金|4種類の使い分け

持続化補助金|販路開拓・新メニュー・集客全般

飲食店が最も多く活用する補助金が小規模事業者持続化補助金です。補助率2/3・最大50万円(通常枠)で、販路開拓と業務効率化に関わる幅広い経費が対象です。飲食店が特によく使う用途としては、新メニュー開発(試作費・原材料費・包装デザイン)、広報費(チラシ・SNS広告・グルメ情報誌への掲載費用・看板)、ホームページ作成、店舗改装・内装工事(販路開拓目的)、テイクアウト用什器・設備の購入などがあります。

飲食店が持続化補助金で採択されやすい取り組みのパターンは「新メニューの開発+それを告知するチラシ・SNS広告」の組み合わせです。新商品開発費と広報費を組み合わせると複数の経費区分を活用でき、補助額を最大化しやすくなります。また、「テイクアウト対応の開始」「オンライン予約システムの導入」など、コロナ以降の経営変化に対応した取り組みとして計画書を構成することも有効です。

IT導入補助金|予約管理・顧客管理・POSレジ・会計ソフト

IT導入補助金は、登録済みのITツール導入費用を補助します。飲食店での活用場面としては、POSレジシステム、テーブルオーダーシステム(セルフオーダー端末)、予約管理システム、顧客管理(CRM)ツール、会計・給与管理ソフト、グルメサイトとの連携ツールなどが挙げられます。補助率は通常枠1/2・インボイス枠(会計ソフト等)は中小3/4〜小規模4/5と高くなります。

飲食店でIT導入補助金を使う際の注意点は、「IT導入支援事業者として登録されているベンダーのツール」でなければ補助対象にならないことです。「このPOSレジに補助金が使えますか?」と確認する前に、そのベンダーがIT導入支援事業者として登録されているかを公式サイトで確認してください。

省力化投資補助金|食器洗浄機・自動調理機器・配膳ロボット

省力化投資補助金は人手不足解消を目的とした補助金で、飲食業での活用が特に増えています。対象はカタログに掲載されたロボット・IoT・AI等の機器で、食器洗浄機・自動調理機器(炊飯ロボット等)・配膳ロボット・セルフオーダー端末などが飲食業での対象となる場合があります。補助率1/2以内(小規模2/3)・補助上限は機器の種類によって異なります。

省力化投資補助金は、業種別売上高に占める人件費率の基準を満たす事業者が対象です。飲食業は人件費率が高い業種であるため、要件を満たしやすいとされています。「ホールスタッフの配膳業務をロボットに置き換えて人手不足を解消する」「食洗機の自動化でバック業務の人時を削減する」といった取り組みに活用できます。

ものづくり補助金|大規模厨房設備・自動化ライン

ものづくり補助金は中小企業を対象とした最大1,000万円(一般型)規模の補助金で、主に製造業・加工業向けですが、飲食業でも製造加工を伴う取り組み(セントラルキッチンの設立・食品加工ラインの導入等)では申請可能な場合があります。補助率1/2(小規模2/3)で、単価が数百万円を超える大型設備への投資に向いています。認定支援機関の確認書が必要です。

飲食店の課題・目的別の補助金使い分けマップ
図2:飲食店の課題・目的別補助金の使い分けマップ

飲食店の補助金活用|課題別の使い方一覧

課題・目的 おすすめ補助金 活用できる主な経費 補助上限の目安
新メニュー開発持続化補助金試作費・原材料費・パッケージデザイン最大50万円
チラシ・SNS集客持続化補助金広報費(チラシ・SNS広告・看板)最大50万円
HP・予約サイト作成持続化補助金ウェブサイト関連費(上限1/4以内)12.5万円以内
POSレジ・予約管理IT導入補助金登録ITツール費用(1〜3年分)最大450万円
食器洗浄機・配膳ロボット省力化投資補助金カタログ掲載機器の購入費機器による
店舗内装・改装持続化補助金委託・外注費(上限1/2以内)25万円以内
大型厨房設備ものづくり補助金機械装置費・設備工事費最大1,000万円
テイクアウト用什器持続化補助金機械装置等費・新商品開発費最大50万円

持続化補助金で飲食店が採択されるためのポイント

「なぜ飲食店の取り組みが販路開拓につながるか」を書き切る

持続化補助金の審査で飲食店の申請が落ちやすいパターンは「新しい設備を購入したい」「内装をきれいにしたい」という欲求だけが前面に出ている計画書です。審査の視点は「この取り組みが販路開拓・業務効率化に直結するか」です。

たとえば「新メニューを開発して近隣ファミリー層への訴求を強化する」であれば、現状の客層分析・ターゲットの明確化・新メニューの内容・宣伝計画・売上目標という流れで計画書を構成することで、「なぜこの投資が販路開拓につながるか」が審査員に伝わります。単に「〇〇を購入したい」という書き方は避けてください。

地域の競合分析を具体的に書く

飲食業は地域密着型の事業がほとんどです。商圏内の競合店(チェーン店・個人店・テイクアウト専門店等)との比較を表にまとめ、自店の強みと差別化ポイントを明確にすることで、審査員の評価が上がります。「近隣に競合が多い」だけでなく「競合Aはランチ帯が弱い・競合Bはテイクアウトに対応していない・自店はそこに強みがある」という具体的な競合分析が効果的です。

数値目標を現実的な根拠で示す

「売上が上がります」では不十分です。「新メニューを月間〇食販売する目標で、1食〇円の粗利なら月間〇万円の粗利増」という形で目標数値と根拠をセットで示してください。過去の類似商品の販売実績・地域の人口データ・ターゲット客の来店頻度などを根拠として使えます。

飲食店が採択される事業計画書の3つのポイント図解
図3:飲食店の持続化補助金採択につながる事業計画書の3ポイント

飲食店が補助金申請で確認すべき注意点

  • 「宿泊業・娯楽業」扱いになる場合は従業員数基準が変わる 居酒屋・バー・カラオケ付き飲食店などは「娯楽業」に分類される場合があります。その場合、小規模事業者の従業員数基準が20人以下になります。自社の業種区分を確認してから申請計画を立ててください。
  • 食材費・消耗品費は基本的に補助対象外 通常の仕入れ・食材費・消耗品は補助対象外です。「新商品開発費」として申請できるのは、あくまでも新メニュー・新商品開発のための試作に使う原材料費です。日常的な仕入れは対象になりません。
  • 既存設備の修繕・維持費は基本的に補助対象外 壊れた厨房機器の修理・既存設備の定期メンテナンスは補助対象外です。「新たに導入する設備・什器」や「販路開拓・業務効率化のために新規で取り組む経費」が対象です。
  • 交付決定前の発注・購入は補助対象外 採択の連絡が来ても、「交付決定通知書」を受け取る前に発注・購入してはいけません。「採択されたからすぐ動いた」が補助金を受け取れない原因になります。
飲食店の補助金申請チェックリスト
  • 自社の従業員数・業種区分を確認した(宿泊・娯楽業かどうか)
  • GビズIDプライムを取得している
  • 申請したい補助金の公募要領の最新版を入手した
  • 商工会・商工会議所に相談予約を入れた(持続化補助金の場合)
  • 事業計画書に販路開拓ストーリーと数値目標を記載した
  • 見積書を複数社から取得した
  • 交付決定前に発注しないことを関係者全員で共有した

飲食業向けの助成金も活用する

補助金と並行して助成金の活用も検討することをおすすめします。特にパート・アルバイトを雇用している飲食店では、雇用関係の助成金が有効な場合があります。キャリアアップ助成金(有期雇用から正社員化した場合の助成)、人材開発支援助成金(従業員の訓練・研修費用)などは、厚生労働省が管轄する助成金で、採択審査のない申請要件充足型の制度です。補助金と異なり「採択率」の概念がなく、要件を満たせば支給されます。

ただし、助成金は申請から受給まで数か月〜1年以上かかる場合があります。また、就業規則の整備・社会保険加入・事前の届出が必要なものが多いため、申請前に管轄の都道府県労働局・ハローワークに相談することをおすすめします。

出典・参考URL

よくある質問

Q飲食店の厨房設備を補助金で購入できますか?
A

購入できる可能性があります。小規模事業者持続化補助金の「機械装置等費」では、販路開拓・業務効率化に必要な厨房設備・調理器具が対象になることがあります。また、省力化投資補助金では自動調理機器・食器洗浄機・セルフオーダー端末など労働力を代替する設備が対象です。どの補助金を使うかは、設備の目的・金額・事業規模によって変わります。

Q飲食店がホームページやSNS集客に補助金を使えますか?
A

持続化補助金の「広報費」(チラシ・SNS広告・看板)や「ウェブサイト関連費」(HP作成・ECサイト・SEO対策)が対象です。ただしウェブサイト関連費は補助上限の1/4以内という制限があります。IT導入補助金では、グルメサイト連携・予約管理システム・顧客管理ツールなど登録済みITツールが対象です。

Qテイクアウト・デリバリー対応の設備に補助金は使えますか?
A

持続化補助金が有力な選択肢です。テイクアウト用パッケージ・容器・保温バッグ・専用什器・ECサイト構築(デリバリー注文受付)など、新たな販路として「テイクアウト・デリバリー対応の取り組み」を事業計画書に記載することで、関連する経費が補助対象になる場合があります。事業計画書でテイクアウト展開の必要性と効果を具体的に書くことが重要です。

Q個人経営の小さな飲食店でも補助金を申請できますか?
A

申請できます。持続化補助金は個人事業主・一人経営の飲食店でも対象です。商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く)は常時使用する従業員5人以下が「小規模事業者」の対象です。開業届を出していれば屋号での申請も可能です。まず管轄の商工会・商工会議所に相談することをおすすめします。

Q内装改装・リフォームに補助金を使えますか?
A

持続化補助金の「委託・外注費」で店舗改装工事・内装リフォームが対象になることがあります。ただし、補助上限の1/2以内という制限があり、単なる修繕ではなく「販路開拓・業務効率化のために必要な改装」として事業計画書に記載する必要があります。改装がどのように販路開拓や生産性向上につながるかを計画書で説明することが採択のポイントです。