「うちは赤字だから補助金は無理だろう」と思っていませんか?実際には、赤字であることが申請の絶対的な障壁になるとは限りません。制度ごとに要件が異なるため、まず自社の状況と各制度の条件を照合することが重要です。この記事で審査の実態を整理します。

補助金の申請要件として「黒字であること」が明記されている制度は多くありません。ものづくり補助金・IT導入補助金・小規模事業者持続化補助金などの主要制度では、直近の決算が赤字であっても申請できることがあります。

ただし、赤字であることが審査において不利に働く可能性はゼロではありません。特に「事業の継続性・将来性」を評価するポイントで、赤字の原因と改善見通しを説明できるかどうかが採択率に影響することがあります。この記事では、赤字会社が補助金を申請する際に知っておくべき審査の仕組みと対策を解説します。

赤字でも申請できる主な補助金と財務要件

赤字でも申請できる主な補助金
制度ごとに財務要件が異なるため、申請前に公募要領を確認することが重要です

主要な補助金制度の財務要件を整理します。「黒字であること」が明文化されているかどうかを確認することが最初のステップです。

補助金名 赤字での申請可否 財務関連の主な要件
ものづくり補助金 申請可能なことが多い 税金・社会保険料の未納がないこと。付加価値額・給与支給総額等の数値目標の達成を誓約することが必要
IT導入補助金 申請可能なことが多い 税金・社会保険料の未納がないこと。反社会的勢力に該当しないこと等
持続化補助金 申請可能なことが多い 商工会・商工会議所の会員であること等(制度・地域による)。税金の未納がないこと
雇用関連の助成金 要件による 雇用保険・社会保険への加入が要件。制度によっては一定期間の雇用実績が必要

参考:中小企業庁「ものづくり補助金総合サイト」(https://portal.monodukuri-hojo.jp/)、IT導入補助金公式サイト(https://it-shien.smrj.go.jp/

赤字会社が申請前に確認すべき3つのポイント

赤字であっても補助金の申請自体は可能なことがありますが、申請前に確認しておくべき重要なポイントがあります。

ポイント1:税金・社会保険料の未納がないか

ほぼすべての補助金制度において、法人税・消費税・社会保険料に未納がないことが申請要件になっています。赤字であっても未納がなければ申請できることがあります。逆に言えば、黒字であっても未納がある場合は申請できないことがほとんどです。まず税務署・年金事務所・都道府県税事務所への滞納がないかを確認することが先決です。

万が一未納がある場合は、分納・猶予等の手続きをとったうえで、申請可否を認定支援機関や商工会に相談することをおすすめします。

ポイント2:赤字の原因が「一時的」か「構造的」か

審査においては、赤字の「原因」と「今後の見通し」が評価されることがあります。以下の2パターンでは審査上の影響が異なることがあります。

  • 一時的な赤字(設備投資・創業初期費用・特別損失等が原因) 本業の収益力が維持されており、特定の事情で一時的に赤字になった場合は、事業計画書でその経緯を説明することで審査員に理解してもらえることがあります。「翌期以降は黒字化の見通しがある」という根拠を示すことが重要です。
  • 構造的な赤字(売上低迷・コスト過多・市場縮小等が原因) 本業の収益構造に課題がある場合は、補助金を活用してどう改善するかを具体的に説明することが求められます。「この設備・ITツールを入れることで原価を○%削減できる」「新たな販路開拓で売上を○%伸ばす計画」など、数字を用いた改善シナリオが必要です。

ポイント3:補助金の数値目標に同意できるか

ものづくり補助金では、採択後に「付加価値額の年率3%以上向上」「給与支給総額の年率1.5%以上向上」などの数値目標の達成を誓約する必要があります。赤字会社がこの数値目標を達成できるかどうかを事前にシミュレーションしておくことが重要です。目標未達の場合、補助金の一部返還を求められることがあるため、無理のない計画を立てることが必要です。

赤字会社が採択されるための事業計画書の書き方

赤字会社の事業計画書の書き方
赤字の原因と改善シナリオを数字で説明することが採択への鍵です

赤字会社が補助金審査を通過するためには、事業計画書の質が特に重要になります。以下のポイントを意識して作成することをおすすめします。

赤字の原因を正直に書く

審査員は申請書と財務諸表を照合します。赤字の事実を隠したり曖昧にしたりすると、信頼性が低下することがあります。「○年度は設備更新費用が重なり特別損失が発生した」「主要取引先の撤退により売上が○%減少した」など、赤字の原因を具体的に説明することが重要です。

今回の補助金投資によって何がどう変わるかを数字で示す

「この補助金で○○を導入することで、原価が月○万円削減できる」「新たな販路を開拓することで年間売上を○万円増やす計画」など、補助金投資の効果を定量的に示すことが審査員に伝わりやすい書き方です。楽観的な数字ではなく、根拠のある保守的な見通しを出すことが信頼性につながります。

経営者の強みと改善への意思を書く

財務状況が厳しい場合でも、経営者自身の業界経験・技術力・既存顧客との関係性・改善への具体的な取り組みをアピールすることで、審査員に「この会社は立て直せる」という印象を与えられることがあります。

赤字会社の事業計画書に盛り込むべき内容
  • 赤字になった原因(外部環境・内部要因を分けて説明)
  • 今回の補助金投資によって改善できる具体的な課題
  • 投資後の売上・利益・コストの変化シミュレーション(数字で)
  • 数値目標の達成根拠(付加価値額向上・給与改善の見通し)
  • 経営者の業界経験・実績・強みのアピール

赤字会社が補助金申請を避けるべきケース

赤字であっても申請できる制度は多くありますが、以下のような状況では申請のタイミングを再検討することをおすすめします。

申請前に状況を整理すべきケース
  • 税金・社会保険料の滞納がある(まず滞納の解消が先決)
  • すでに資金繰りが切迫しており、補助金の後払い制に対応できない(補助金入金まで数か月以上かかることがある)
  • 事業の継続意思が明確でない(廃業・事業承継の検討中など)
  • 採択後の数値目標(付加価値額・給与)の達成が現実的に不可能な状況

特に補助金は後払い制であるため、採択後から入金まで数か月以上かかることがあります。資金繰りが厳しい状況では、補助金だけでなく融資・助成金との組み合わせを検討することをおすすめします。認定支援機関や商工会に相談することで、自社の状況に合った資金調達の方法を一緒に整理してもらえることがあります。

赤字会社でも活用しやすい資金調達の組み合わせ

赤字会社が資金調達を検討する場合、補助金単体ではなく、他の制度と組み合わせることで選択肢が広がることがあります。

  • 日本政策金融公庫の融資との組み合わせ 公庫は中小企業向けの政策金融機関であり、赤字であっても事業計画書の内容次第で融資を受けられることがあります。補助金の後払い期間中の運転資金を融資で賄い、補助金入金後に返済するという組み合わせが活用されることがあります。
  • 信用保証協会の保証付き融資 都道府県の信用保証協会が保証人になることで、民間銀行から融資を受けやすくなる制度です。赤字会社向けの特別保証制度が設けられていることがあります。制度は都道府県によって異なることがあります。
  • 雇用調整助成金・キャリアアップ助成金 雇用関連の助成金は赤字でも申請できることが多く、要件を満たせば原則として受給できるケースが多い制度です。補助金と並行して活用できることがあります。

参考:厚生労働省「各種助成金の申請手続き」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html

よくある質問

Q赤字でも補助金を申請できますか?
A

制度によっては赤字でも申請できることがあります。ものづくり補助金・持続化補助金・IT導入補助金は基本的に黒字であることを採択の絶対要件としていません。ただし、税金や社会保険料に未納がある場合は申請できないことが多いため、まず納付状況の確認が必要です。

Q赤字会社が補助金審査で不利になる点はありますか?
A

制度や審査基準によって異なりますが、財務状況が良好な企業と比較すると、事業の継続性・返済可能性の説明が弱いと判断されることがあります。赤字の原因と改善見通しを事業計画書に明示することで、この点を補うことができることがあります。

Q税金の滞納があると補助金は申請できませんか?
A

多くの補助金は「税金・社会保険料の未納がないこと」を申請要件としています。滞納がある場合は申請前に解消しておくことが原則です。分納・猶予等の状況によっては対応が異なることがあるため、事前に認定支援機関や商工会に相談することをおすすめします。

Q赤字会社が補助金を活用するうえで最初にすべきことは何ですか?
A

まず「税金・社会保険料の未納がないか」を確認することが先決です。次に赤字の原因を整理し、今回の補助金投資によって売上・利益がどう改善するかを事業計画書で説明できる状態にすることが重要です。認定支援機関や商工会への相談も早めに行うことをおすすめします。