居住支援の実績がなくても居住支援法人の指定は受けられる?審査で見られるポイント

「居住支援の実績がまだないから指定は無理では」というご相談をよくいただきます。結論から言うと、実績ゼロでも指定を受けている法人は多数あります。審査で実際に見られているポイントを整理します。

指定制度は「実績がある法人だけの制度」ではない

居住支援法人の指定制度は、住宅確保要配慮者への支援を担う法人を全国的に増やしていくことを目的とした制度です。そのため、すでに居住支援の実績がある法人だけでなく、これから居住支援に取り組もうとする法人の新規参入も制度上想定されています。実際、指定を受けている法人の中には、指定申請の時点では居住支援としての活動実績がなかった法人も相当数含まれています。

審査担当者が見ているのは「過去にどれだけ支援してきたか」だけではなく、「指定を受けた後、どのように支援業務を継続的に行っていけるか」という将来に向けた実行可能性です。

審査で実際に見られる主なポイント

実績の有無にかかわらず、居住支援法人の指定審査では主に次のような点が確認されます。

  • 財産的基礎:事業を継続的に行うだけの財務的な安定性があるか(直近の決算状況、資本金・基本財産など)。
  • 実施体制:支援業務を担当する職員がいるか、業務分担が明確か。
  • 事業計画の具体性:どの住宅確保要配慮者を、どのような方法で支援するのか、開始後の見通しが具体的に示されているか。
  • 欠格事由に該当しないこと:法人・役員が指定の欠格事由(一定の犯罪歴、暴力団関係者等)に該当しないこと。

これらのうち、実績がなくても準備次第で十分に説明できるのが実施体制と事業計画です。逆に言えば、実績があっても財産的基礎や体制面の説明が不十分だと、指定が通らないこともあります。

実績がない法人が事業計画で示すべきこと

実績がない場合、事業計画書では「なぜこの法人が居住支援を行うのか」という動機と、「指定後どのように支援を行っていくのか」という具体的な実行計画を、できるだけ具体的に記載することが重要です。例えば、既存事業(福祉事業、不動産賃貸業、就労支援など)を通じてすでに接点のある住宅確保要配慮者の具体例、想定される支援件数、連携を予定している不動産業者や医療・福祉機関との関係などを盛り込むことで、実績がなくても実行可能性を示すことができます。

また、指定申請前に地域の居住支援協議会に参加し、他の居住支援法人や不動産業者との関係づくりを進めておくことも、事業計画の説得力を補強する材料になります。

実績がないことを過度に恐れる必要はない

実務上、都道府県の審査担当者は「実績ゼロだから不指定」という単純な判断はしていません。むしろ、実績があっても事業計画があいまいな申請より、実績がなくても計画が具体的で実行可能性の高い申請の方が、審査を通過しやすいというのが実感です。実績がないことを理由に申請をためらうより、まずは自法人が支援できる対象者と体制を具体的に整理することから始めることをおすすめします。

実績を補強するために申請前にできること

指定申請の準備期間中であっても、実績を積み上げる余地は残されています。例えば、既存の福祉事業や不動産賃貸業の中で、住宅確保要配慮者に該当する方への相談対応や入居支援を行った実例があれば、正式な「居住支援法人」としての活動でなくても、事業計画の裏付け資料として整理しておくことができます。また、居住支援協議会や地域の不動産業者団体の勉強会に参加し、関係者との顔つなぎを進めておくことも、審査時に「支援体制が構築されつつある」ことを示す材料になります。

申請直前になって慌てて実績を作ろうとするのではなく、申請を検討し始めた段階から、日々の業務の中で住宅確保要配慮者との関わりを意識的に記録しておくことが、結果的に説得力のある事業計画につながります。

指定後に実績不足を理由に不利益を受けることはあるか

指定を受けた後、一定期間内に支援実績がゼロのままだからといって、直ちに指定を取り消されるわけではありません。ただし、居住支援法人としての活動が実質的に行われていない状態が続くと、都道府県から状況確認の連絡が入ることはあります。指定はゴールではなく、そこから実際に支援業務を継続していくためのスタートラインであるという点を踏まえ、指定後の運用体制まで見据えて申請準備を進めることが重要です。

よくある質問

Q.居住支援の実績が1件もない状態で申請するのは無謀ですか?

A.無謀ではありません。指定制度は新規参入を前提とした仕組みであり、実績ゼロの法人による申請は珍しくありません。重要なのは実績の有無よりも、指定後にどう支援業務を行うかを具体的に示せるかどうかです。

Q.実績の代わりに何を準備すればよいですか?

A.既存事業を通じた住宅確保要配慮者との接点、支援体制を担う職員の配置計画、連携予定の不動産業者や関係機関の有無などを、事業計画書の中で具体的に示すことが実績の代わりになります。

まとめ

居住支援法人の指定制度は新規参入を前提とした仕組みであり、実績ゼロでの指定申請は珍しくありません。審査では実績の有無そのものより、財産的基礎・実施体制・事業計画の具体性が見られます。実績がない場合は、既存事業を通じた対象者との接点や、指定後の具体的な支援計画を事業計画書に丁寧に落とし込むことで、実行可能性を示すことができます。

阿久津和宏

阿久津和宏(あくつ かずひろ)

あくつ行政書士事務所 代表/行政書士/Well Consultant合同会社 代表

セブン‐イレブン・ジャパンで店舗運営コンサルタントとして、加盟店オーナーが日々ぶつかる経営課題に向き合ってきました。独立後は行政書士・経済産業省認定 経営革新等認定支援機関として、許認可申請の支援に携わっています。「申請を通すこと」をゴールにせず、その先の事業をどう運営していくかまで踏み込んで設計する姿勢を大切にしており、居住支援法人の指定申請支援では、指定後に活用できる補助金・助成金の情報提供も含めて伴走します。

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