売上実績がなくても大丈夫?居住支援法人の指定で問われる財産的基礎とは

居住支援法人の指定申請では「財産的基礎」という項目が審査されます。売上実績が少ない、あるいは設立間もない法人の場合、この財産的基礎の説明で不安を感じる方が少なくありません。何を、どこまで示せばよいのかを整理します。

財産的基礎で見られているのは「売上の大きさ」ではない

居住支援法人の指定審査における財産的基礎の確認は、法人の売上規模を評価するものではありません。見られているのは、居住支援業務を継続的に行っていくだけの財務的な安定性があるかどうかです。売上が小さくても、債務超過に陥っておらず、事業を継続できる状態であれば、財産的基礎の要件を満たすことは十分に可能です。

逆に言えば、売上規模が大きい法人であっても、直近の決算で大幅な債務超過が生じているような場合には、財産的基礎の説明に工夫が必要になります。

財産的基礎の審査で確認される主な資料

財産的基礎の確認に使われる代表的な資料には、次のようなものがあります。

  • 直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)
  • 法人の登記事項証明書(資本金・基本財産の額の確認)
  • 納税証明書(税金の滞納がないことの確認)
  • 今後の事業収支の見込みを示す資料(申請時点で決算実績が乏しい場合)

これらの資料から、都道府県は「この法人が居住支援業務を安定的に継続できるか」を判断します。売上実績が少ない法人であっても、これらの資料を整理し、事業の継続性を裏付ける説明を添えることで、財産的基礎の要件をクリアできる可能性は十分にあります。

売上実績が少ない法人が準備しておきたいこと

売上実績が少ない、あるいは設立間もない法人の場合、決算書だけでは財務状況が十分に伝わらないことがあります。そのようなケースでは、次のような補足資料を用意しておくと審査担当者に伝わりやすくなります。

  • 今後の事業計画に基づく収支見込み(居住支援業務でどの程度の収入・支出を見込んでいるか)
  • 既存事業からの資金的な裏付け(他の事業からの収益で居住支援業務を支える体制であること)
  • 資本金・基本財産の増強予定がある場合はその計画

財産的基礎は「今の数字が大きいかどうか」だけでなく、「今後どのように事業を維持していくのか」という説明力が問われる項目でもあります。

財産的基礎の不安は事前相談で解消できる

財産的基礎の要件は都道府県ごとに具体的な基準や運用に差があるため、申請前の事前相談の段階で、自法人の財務状況について率直に相談しておくことが有効です。決算内容に不安がある場合ほど、申請書を提出してから指摘を受けるより、事前に相談し、必要な補足資料や説明の方向性を確認しておく方が、結果的にスムーズな審査につながります。

債務超過に近い場合はどう対応するか

直近の決算で債務超過に近い、あるいは債務超過に陥っている場合でも、それだけで指定が受けられないと決まるわけではありません。重要なのは、その状態が改善傾向にあるのか、今後の事業計画によってどう立て直していく見込みなのかを説明できることです。例えば、既存事業の収益改善計画や、資本金の増強予定、代表者からの追加出資予定などがあれば、それらを財産的基礎の説明資料に加えることで、審査担当者の懸念を和らげることができます。

財務状況が厳しい法人ほど、決算書をそのまま提出するだけでなく、状況を補足する説明文を添える、あるいは公認会計士や税理士の所見を参考資料として添付するといった工夫が、審査を通過するうえで有効になることがあります。

他の福祉事業の財務状況とあわせて説明する視点

すでに福祉事業を運営している法人が居住支援法人の指定を目指す場合、居住支援業務単体の収支だけでなく、法人全体としての財務基盤をあわせて示すことで、財産的基礎の説明に厚みを持たせることができます。例えば、既存の障がい福祉サービスや高齢者施設の運営で一定の収益基盤がある場合、その事業からの収益が居住支援業務の立ち上げ期を支える形になることを事業計画書で明示すると、審査担当者にとって財務面の懸念が和らぎやすくなります。単独の新規事業として財産的基礎を示すより、既存事業とのつながりの中で説明する方が、実態に即した申請になるケースが多くあります。

よくある質問

Q.財産的基礎とは具体的に何を指しますか?

A.法人が居住支援業務を継続的に行っていくだけの経済的な基盤を指します。具体的には、直近の決算書の内容、資本金・基本財産の額、債務超過の有無などが確認されます。売上の絶対額そのものより、事業を継続できる財務状態かどうかが見られます。

Q.設立したばかりで決算実績が1期もない場合はどうすればよいですか?

A.設立初年度で決算を迎えていない場合は、設立時の財産目録や資本金の額、今後の収支見込みを示す資料で代替することが一般的です。都道府県によって求められる資料が異なるため、事前相談の段階で確認しておくことをおすすめします。

まとめ

居住支援法人の指定審査における財産的基礎は、売上の大きさではなく事業を継続できる財務的安定性が見られます。決算書・登記事項証明書・納税証明書に加え、売上実績が少ない場合は今後の収支見込みや既存事業からの資金的裏付けを補足することで、財産的基礎の要件を説明できます。不安がある場合は事前相談で確認しておくことが有効です。

阿久津和宏

阿久津和宏(あくつ かずひろ)

あくつ行政書士事務所 代表/行政書士/Well Consultant合同会社 代表

セブン‐イレブン・ジャパンで店舗運営コンサルタントとして、加盟店オーナーが日々ぶつかる経営課題に向き合ってきました。独立後は行政書士・経済産業省認定 経営革新等認定支援機関として、許認可申請の支援に携わっています。「申請を通すこと」をゴールにせず、その先の事業をどう運営していくかまで踏み込んで設計する姿勢を大切にしており、居住支援法人の指定申請支援では、指定後に活用できる補助金・助成金の情報提供も含めて伴走します。

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