住宅確保要配慮者とは誰のこと?高齢者・障がい者・生活困窮者を支える仕組み

「住宅確保要配慮者」という言葉は、居住支援法人の制度を調べているとほぼ必ず出てきます。誰を指す言葉なのか、どこまでの範囲が含まれるのかを、法律の定義に沿って整理します。

住宅確保要配慮者は「住宅セーフティネット法」で定められた言葉

「住宅確保要配慮者」とは、正式名称を「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(通称:住宅セーフティネット法)に定められた用語です。民間の賃貸住宅市場において、年齢や世帯状況、経済状況などを理由に入居を断られやすい、あるいは自力での住まい探しに困難を抱えやすい人たちを指します。

居住支援法人は、この住宅確保要配慮者を対象に、住まい探しの相談から入居後のフォローまでを支援する法人として都道府県知事から指定を受けます。つまり「誰を支援する法人なのか」を正しく理解することが、指定申請の出発点になります。

法律・施行規則で定められている基本区分

住宅セーフティネット法および同法施行規則では、住宅確保要配慮者として次のような区分が示されています。

  • 低額所得者(収入が一定基準以下の世帯)
  • 被災者(発災から一定期間内の災害被災者)
  • 高齢者
  • 障害者
  • 子どもを養育している者(子育て世帯・ひとり親世帯を含む)
  • 外国人
  • DV被害者
  • 犯罪被害者
  • 更生保護対象者(保護観察中の者等)
  • 生活困窮者
  • UIJターンによる転入者 など

いずれも「賃貸住宅市場において入居のハードルが相対的に高くなりやすい」という共通点があります。年齢や障害の有無そのものが問題なのではなく、「保証人が立てにくい」「緊急連絡先が確保しづらい」「収入証明の面で貸主の懸念を招きやすい」といった、入居審査上の実務的な壁が生じやすいことが、これらの区分が設けられている背景です。

都道府県・市区町村が独自に対象を追加できる

住宅確保要配慮者の範囲は、国が定める基本区分だけで完結しません。都道府県や市区町村は、地域の実情に応じて、供給促進計画の中で対象をさらに追加できる仕組みになっています。例えば、生活保護受給者や刑務所出所者、LGBT当事者などを明示的に対象へ加えている自治体もあります。

そのため、居住支援法人の指定申請にあたっては、申請先の都道府県が策定している住宅確保要配慮者向け賃貸住宅供給促進計画を確認し、地域独自の対象区分まで把握しておく必要があります。国の基本区分だけを見て「うちの事業とは対象が違う」と早合点してしまうケースもあるため、この確認は申請準備の初期段階で行うことをおすすめします。

居住支援法人が果たす役割との関係

居住支援法人は、こうした住宅確保要配慮者に対して、住宅情報の提供、入居相談、見守りなどの生活支援、家賃債務保証業務(実施する場合)といった支援業務を行います。福祉事業者が居住支援法人の指定を目指す場合、多くは既存の事業(障害福祉サービス、高齢者施設運営、就労支援など)を通じて、すでに住宅確保要配慮者に該当する利用者と接点を持っているケースがほとんどです。

つまり「新しく別の対象者を開拓する」というより、「すでに関わっている利用者の住まいの課題に、制度的な裏付けを持って対応できるようになる」という位置づけで指定申請を検討する法人が多いというのが実務上の実感です。

指定申請の準備で確認しておきたいこと

指定申請を検討する段階では、次の3点を整理しておくと、その後の書類作成がスムーズになります。1つ目は、自分たちの既存事業がどの区分の住宅確保要配慮者と接点を持っているかの棚卸しです。障害福祉サービス事業所であれば障害者、高齢者施設であれば高齢者、就労支援事業所であれば生活困窮者や更生保護対象者など、事業内容によって主な接点は異なります。

2つ目は、申請先の都道府県が公開している供給促進計画で、地域独自の対象区分を確認することです。3つ目は、支援対象者の範囲が事業計画書の記載内容と整合しているかどうかです。この3点を事前に整理しておくことで、審査担当者に対して「誰を、どのように支援する法人なのか」を一貫性のある形で説明できるようになります。

よくある質問

Q.住宅確保要配慮者に当てはまれば必ず住宅に困っているということですか?

A.いいえ。住宅確保要配慮者は「住宅の確保に配慮を要する可能性がある属性」として法律で定義された区分であり、その属性に該当する人が全員、現に住まい探しで困っているとは限りません。実際に支援が必要かどうかは個々の状況によります。

Q.住宅確保要配慮者の範囲は法律ではっきり決まっていますか?

A.低額所得者・被災者・高齢者・障害者・子育て世帯などの基本区分は法律・施行規則に定められていますが、それ以外にも都道府県知事や市区町村が地域の実情に応じて対象を追加できる仕組みがあります。地域ごとの定めまで確認する必要があります。

まとめ

住宅確保要配慮者は、住宅セーフティネット法で定められた「賃貸住宅市場で入居のハードルが相対的に高くなりやすい人」を指す言葉で、高齢者・障害者・子育て世帯・低額所得者などの基本区分に加え、都道府県・市区町村が地域の実情に応じて対象を追加できます。居住支援法人の指定を検討する際は、まず自分たちの事業がどの区分の対象者と接点を持っているかを整理し、申請先自治体の供給促進計画で地域独自の対象範囲まで確認することが出発点になります。

阿久津和宏

阿久津和宏(あくつ かずひろ)

あくつ行政書士事務所 代表/行政書士/Well Consultant合同会社 代表

セブン‐イレブン・ジャパンで店舗運営コンサルタントとして、加盟店オーナーが日々ぶつかる経営課題に向き合ってきました。独立後は行政書士・経済産業省認定 経営革新等認定支援機関として、許認可申請の支援に携わっています。「申請を通すこと」をゴールにせず、その先の事業をどう運営していくかまで踏み込んで設計する姿勢を大切にしており、居住支援法人の指定申請支援では、指定後に活用できる補助金・助成金の情報提供も含めて伴走します。

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